BL小説集
□トロイメライ
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「フリードリヒ様が、会食の件での謝罪を。それから陛下との会話をお望みです。もっとお話ししてほしいなんて、可愛らしいですこと」
「そうか」
あっけからんと返答し、エリッサを見つめる。そしてダイケンの方を見た。
「“暴れ牛エリン"――これを侍女頭に指定したのはお前か、ダイケン」
「……は」
いずればれるのは明白だった。
伴侶の安全を考え、退役軍人たるエリッサを侍女頭に仕立てたのはダイケンだ。
王でさえ手をこまねいた強烈な女将軍。不祥事を起こし、戦場からは姿を消したが、年齢を重ねても変わらぬ凶悪な笑みは忘れるはずもあるまい。
「陛下、フリードリヒ様は非常に忍耐強い。あなたさまの最高の伴侶となりましょう」
だが今浮かべる微笑はなんと慈愛に満ちたものか。
フリードリヒに対する敬意の深さが伺える。
「なるほど。お前が言うならば、そうかも知れぬ」
「もったいないお言葉にございます」
「だが最後に決めるのは私だ。あれが神憑きだろうが、それは大した問題ではない」
そう言い残し、振り向くこともなくエンディミオは執務室へ歩き出した。