☆彡秋のエゴイスト2
□おかしなヒロさん
2ページ/3ページ
ヒロさんの不可解な行動に疑問を残したまま3日が過ぎた。
今日は帰宅予定の日だけれど、担当の患者さんに心配な子がいて帰れそうにない。
『時間があったら着替えを届けてください』とヒロさんにメールをしておいたら、昼休み頃に『了解。今夜届ける。』と返事があった。
いつも通りのやり取りにちょっとだけほっとしたけど、今夜会えたらちゃんと観察しないと。
ヒロさんは一人で悩みをため込むタイプで、様子がおかしい時には必ずと言っていいくらい何か理由がある。
最初から俺に話してくれればいいのに、下手に隠そうとするから余計に気になっちゃうんだよね。
そんなところも可愛いのだけれど、まだおかしな態度を取るようならちゃんと話し合わないと。
子供達をベッドに送って、重体の患者さんの様子を診て…少し遅めの休憩時間に入った。
ヒロさん、待っててくれてるかなぁ?
急ぎ足でロビーに向かっていると、ロビーの方から津森先輩の笑い声が聞こえてきた。
またヒロさんをからかって…
「先輩!」
「おっ、お疲れー」
「お疲れ様です!どうしていつも俺より先にヒロさんといるんですか〜」
「さあ?お前がグズグズしてるからじゃねーの?」
先輩はクスクスと笑いながら行ってしまった。
「また先輩に何か言われたんですか?」
「別に。ちょっと相談にのってもらったら爆笑されただけだ。」
「相談って何ですか?」
「お前には言えないこと!もう帰る!!」
「えっ…」
ヒロさんは着替えの入ったバッグを乱暴に押し付けると、ダッシュでエレベーターに飛び乗ってしまった。
「仕事頑張れよ!」
「ヒロ…さん?」
逃げられ・・・た?
俺には言えないことってなんなんですか〜!!
先輩を問い詰めてみたけれど軽く交わされてしまい、モヤモヤしたまま帰宅日を迎えた。
ヒロさん、先輩には言えて俺には内緒の相談事ってなんなんですか?
俺に関わることなのは明らかなのに、心当たりがまるでない。俺、知らないうちにヒロさんに何かしちゃったのかなぁ…
溜息をつきつつ玄関ドアを開ける。
「ただいまです。」
リビングの明かりは消えていてシンとしている。まだ寝るには早い時間なのに…ヒロさん、出かけてるのかなぁ。
ちょっとガッカリしながら靴を脱いでいると、俺の部屋の扉がゆっくりと開いて…ヒロさんが顔をだした。
「お帰り。」
「ヒロさん?」
なに!?この状況?
ヒロさんがいるのは俺の寝室で、着ているのは俺のTシャツ…ですよね…
唖然としていると、ヒロさんはトコトコと俺の方に駆け寄って…胸に飛び込んで来た。
「あわわっ…」
そのまま俺の胸に顔を埋めて抱き着いている。
なんですか…この可愛い生き物は!
「ヒロ…さん?ですよね?」
声をかけると…頭から湯気が吹き出して…ふらふらっと倒れそうになったので、慌てて支えた。
「だ…大丈夫ですか!?」
一体何が…
「大丈夫じゃねー…やっぱ無理。」
ヒロさん?
「上手く甘えられなくてごめん…挙動不審で不安にさせたよな…」
「えっと…どういうことですか?」