純情エゴイスト〜のわヒロ編2〜
□後悔先に立たず?
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「ただいまです。」
病院から帰宅すると、ヒロさんはリビングでパソコンに向かっていた。
「お帰り、飯は?」
「食べてきました。ヒロさんはお仕事ですか?」
「ああ、来週の授業で使う資料作り。早めに終わらせとこうと思って。」
「じゃあ、コーヒー淹れますね。」
「サンキュ。帰ってきたばかりなのに悪いな。」
授業の準備は週末に回すことが多いのに、俺とのデートのために頑張ってくれてるみたいだ。
それがとっても嬉しくて、自分の分のコーヒーに砂糖を3個も入れてしまった。
「ヒロさん、コーヒーここに置きますね。」
コーヒーの入ったマグカップをローテーブルに2つ並べて置いた。ペアマグカップのハートが繋がっているのを見ていると幸せな気持ちになる。
ヒロさんの仕事の邪魔をするつもりはなかったけれど、その時はなんだか嬉しくてドキドキしてとっても幸せな気分だったから、我慢ができなくなってヒロさんに抱きついてしまった。
「うわっ…」
突然のことにヒロさんは驚いて床に倒れてしまった。俺はすかさずヒロさんの上に覆い被さる。
「ヒロさん、好きです。」
「野分!俺はまだ仕事中だ!そういうのは後で…」
「ごめんなさい。でも、少しだけ…」
そう言ってヒロさんの唇を奪った。ヒロさんも流されるままそれ以上抵抗しようとしなかった。
暫くヒロさんと舌を絡め合ってから、ゆっくりと唇を離した。
このままベッドに連れて行きたいけど、折角ヒロさんが頑張って仕事を終わらせようとしてくれているのに俺が邪魔をするわけにはいかない。続きはまた後で…
起き上がろうとした時、肩がテーブルに当たった。
ガタン!!と音がして…マグカップが倒れた。
まだ熱いコーヒーが俺の足にかかった。
幸いマグカップは割れていなかったけれど、コーヒーはヒロさんのパソコンのキーボードにもかかってしまっている。
「すみません!直ぐに拭きます!」
ヒロさんも起き上がって唖然としていたけれど、俺が布巾を取りに行こうとしたらすかさず俺を止めた。
「お前、足大丈夫か?早く冷さないと…こっち来い!」
そう言って、ヒロさんは俺の腕を引っ張って浴室に連れていった。
俺の足にシャワーで冷たい水を掛けながら心配そうにしている。
「火傷って冷やすんだったよな?まだ赤いけど、氷とかいるのか?」
「大丈夫です。これくらいなら直ぐに治りますし、跡も残らないと思います。」
「そうか…お前、デカイんだからもう少し気をつけろよ。」
「はい…ごめんなさい。」
足を冷やすと、ヒロさんは救急箱を持ってきてくれた。手当てをしようとしてくれたけど、包帯が上手く巻けなくて結局俺が自分で巻いた。
「俺は大丈夫ですけど、ヒロさんのパソコンを壊してしまったかもしれないです。」
「コーヒーなら拭いてドライヤーかければ何とかなるかもな。」
「お砂糖3個入れちゃいました。」
「あー…無理か…」
仕事の邪魔をしただけでなく、ヒロさんのパソコンまで壊してしまうなんて最悪だ…しょんぼりとしている俺にヒロさんは笑って言ってくれた。
「気にすんなよ。そろそろ買い替えようと思ってたとこだし、論文がダメになったわけじゃないから心配するな。資料くらい俺にかかればあっと言う間に…」
「ヒロさん…」
「だから、そんな悲しそうな顔するなって!」
「はい///」
ちょっと無理して微笑んでみたら、ヒロさんもにっこりと笑ってくれた。