☆彡秋のエゴイスト2

□本当の誕生日
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Side 野分

休憩時間、ヒロさんからの着信がないかスマホを確認する。

ヒロさんは用も無く仕事中に連絡を寄越すような人ではないから何の通知も表示されないのが当たり前で、毎回ちょっぴり残念な気持ちになるのだけれど・・・

裏を返せば、連絡があったら良くも悪くも一大事ということになる。風邪で寝込んでるとか、怪我をしたとかヒロさんに何かあったらと思うと心配で、時間ができるとこんな風にスマホのチェックをしてしまうんだ。

通知0件・・・喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか。複雑な気持ちで苦笑していると

「ヒロさん!?」

ヒロさんから電話がかかってきた。

「野分です!!」

「うおっ!!・・・の・・・野分!?ビックリした〜」

こんな時間に直接電話を寄越すなんて只事ではない。そう思ったらつい大きな声が出てしまった。

「驚かせてしまってすみません。どうしました?」

「どーしてこういう時に限って出るかなぁ・・・」

出てはいけなかったんでしょうか?よくわからないけどヒロさん、困ってるみたいだ。

「あの〜もしかしてかけ間違いですか?宇佐見さんにかけようとした・・・とか?」

そうだったらショックなんですけど・・・

「そんなんじゃねーよ!ったく、しょうがねーな・・・一度しか言わねーから聞き逃すなよ!」

「はい。」

「野分・・・好きだ!!以上!!」

切れた。

えっと・・・今のは一体・・・?

頭の中でヒロさんの言葉をゆっくりと繰り返してみる。

『野分・・・好きだ!!』

『好き』ってどういう意味でしたっけ?あれ?あれれ?

「ヒロさんから電話で愛の告白ですか!?」

しかも勤務中に・・・絶対にありえない。

まさかの幻聴!?自覚はなかったけれど、相当疲れが溜まっているようだ。

念のため着歴を確認してと・・・スマホを操作して『ヒロさん』の文字に目が点になる。

幻聴でも妄想でもない。これは現実だ。

好き・・・ヒロさんが俺のことを好き///わ〜〜〜っ///・・・って、それはわかってるけど・・・

照れ屋のヒロさんが自主的に言葉で伝えてくるなんて、一体どうしちゃったんだろう?

嬉しい反面、不安が込み上げてくる。

スマホを手にしたまま呆然としていると、扉をノックする音と同時に津森先輩が入ってきた。

「お疲れ〜って、どーした!?死神みたいなツラしてるぞ!」

「先輩〜ヒロさんが〜」

「上條さんに何かあったのか!?」

「俺のこと好きだ・・・って。」

「惚気かよ。だけど、上條さんってそんなキャラだっけ?」

先輩も不振そうに首を傾げている。

「何かの罰ゲームとかか?皆の前で好きなヤツに告るとか、ガキの頃よくやったなぁ。」

「ヒロさんはそんな悪ふざけしません。それに、ちゃんと心がこもっていたと・・・思います。」

あっという間に切れちゃったけど、ハッキリと想いを込めて言ってくれた・・・はず。あーーっ!!しっかり聞いていたはずなのに自信が持てない。

「野分?おーい!」

目の前で手を振られて我に返った。

「素直に言葉通りに受け取っとってやれよ。あの人らしくないのはわかるけど、意を決してかけてきたのは確かなんだろ?」

「はい。」

「だったら喜べ!!今のお前の顔、上條さんが見たら金輪際『好きだ』なんて言ってもらえなくなるぞ。」

確かに。『言わなければよかった』って後悔させちゃいそうだ。

頬をペシペシ叩いてから、もう一度頭の中でヒロさんの言葉を再現する。

『野分・・・好きだ!!』

「ありがとうございます!!俺もヒロさんが好きです!!」

スマホに向かって満面の笑みを向ける。ヒロさん、ありがとうございます。ついでに先輩もありがとうございました。
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