☆彡秋のエゴイスト2

□おかしなヒロさん
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「野分…起きろ。野分…」

頬をペシペシと叩かれて目が覚めた。

「ヒロ…さん?」

真っ暗だけど…もう朝?

寝ぼけ眼を擦りながら起き上がると、ヒロさんが急かすように俺の腕を掴んできた。

「トイレ、ついてきて。」

「はい?」

腕を引かれるまま立ち上がる。

「昼間読んだ本が怖い話でさー、思い出したら怖くなっちまって。」

「プッ…」

怖がりなヒロさん、可愛い///

「笑うなっ///」

薄暗い中でも真っ赤になっているのがわかる。子供みたいで可愛いな〜

トイレの前まで来るとヒロさんはキッと俺を睨みつけた。

「俺が出てくるまでちゃんとここにいろよ。お前だけが頼りなんだからな!」

「はいはい。」

ヒロさんはそう言いつけるとトイレのドアをバタンと閉めた。

ふふっ…可愛い。

脳内でついつい『可愛い』を連発してしまったけど…ヒロさんらしからぬ行動に首を傾げた。

いつも俺の睡眠時間を気にかけてくれるヒロさんが夜中に俺を起こすなんて、それにあのプライドの高いヒロさんがトイレについてきてなんて…絶対にありえない。

どれだけ恐ろしい本を読んだんですか!?

いやいや、きっとこれは夢だ。夢に違いない。頭をブンブンと振っているところにヒロさんが出てきた。

「ありがとな…起こしてごめん。」

恥ずかしそうに俯きながら俺のパジャマの裾をキュッと掴むヒロさん。

「いえ、頼ってくれて嬉しいです。」

なんて幸せな夢なんだ〜///

ヒロさんに引かれるままベッドに戻った。

「おやすみ。」

俺と目を合わせるのがまだ恥ずかしいのか、ヒロさんは俺の胸にしがみついて眠ってしまった。

「おやすみなさい。」

髪にそっとキスをして目を閉じる。夢の中で寝るって変な気分だけど…ヒロさんのお陰でぐっすり眠れそうです。




お弁当の支度をしていると、バタバタとヒロさんが起きてきた。

「のーわーきー!起こすって言ったじゃねーか!!」

「起こしましたよ。数えきれないほど。」

「全然記憶にねーぞ。」

一緒に寝た翌日の朝は相変わらず慌ただしい。

「悪い、朝飯食ってる時間ねーから途中で買ってく!」

「そう言うと思ってお握りにしておきました。お弁当と一緒に持って行ってください。」

「サンキュ。」

ヒロさんはお弁当の包みをさっと受け取って栄養ドリンクと一緒に鞄に突っ込むと、玄関に向かって行ってしまったので、急いで後を追う。

「忘れ物はないですか?」

「ねーよ!」

革靴を履いて、ドアノブに手を掛けたところで…ピタッと止まった。

「ヒロさん?忘れ物ですか?」

「昨日はありがとな。」

「へっ…?」

昨日って…あれは夢…ですよね?

キョトンとしている俺を見上げると同時に、ヒロさんの腕が首に絡みついてきて…

唇が重なる…

「ん!!」

ヒロさんから…行ってきますのチュー?

「恋人同士なんだから…たまにはいいだろ///」

「えっ…」

「行ってくる!!」

鼻先でドアがピシャリと閉まった。

「えっ?…えーーーーっ!!」

慌ててドアを開けると、エレベーターの扉は閉まった後で…

今の本当にヒロさん?…ですよね?
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