☆彡秋のエゴイスト2

□ヒロさんの背中
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急患の処置を終えて、時計を見ると就寝時刻まで少し時間があったのでプレイルームに向かった。

休憩するのも仕事のうちだと分かっているけれど、俺にとっては子供達の相手をしている方が癒されて元気になれるんだ。もちろん、ヒロさんの次に・・・だけどね。

入り口まで来ると、俺に気づいて子供達がパァっと顔を輝かせて駆け寄ってきた。

「くさませんせー!抱っこして〜」

「見て見て!これ私が作ったの♪」

「肩車して〜」

みんな可愛いな〜

「はいはい。順番にね。」

入院中でも自由に動くことができる子供達は元気いっぱいで、走らせたり激しい運動をさせなければ大丈夫な子も多い。

俺は男だしデカイからよじ登ったり、ぶら下がったり、攻撃してきたり・・・看護師さん達が相手ではできない遊びができて楽しいようだ。

外で遊べない子供達のために、寝る前の少しの時間だけでも遊んであげたい。

子供達の中には・・・

「大人なのに遊んでばかりでしょうがないなぁ。怪獣役でよかったら特別に入れてやるよ!」

なんて偉そうに言ってくる子もいて、笑ってしまう。

足元を攻撃してくる男の子達をかわしつつ、肩車をしてあげていると、突然膝がガクンと折れた。

「うわっ!」

どうやら膝の後ろ側に頭突きを食らったようだ。

肩に乗せている子を落とさないように咄嗟にバランスを取ろうとしたら

「痛っ・・・」

足首に激痛が走った。

なんとか床にしゃがみ込んで乗っていた子を下ろす。

「先生、大丈夫ですか!!」

傍で見ていた看護師さんが飛んできた。

「大丈夫、ちょっと捻っただけです。」

笑顔でそう答えて、心配そうに俺を囲んでいる子供達の方を見た。

「ごめんね。次は誰の番かな?」

立ち上がると同時に足に痛みが走る。あ・・・これはマズいかも・・・

だけど、まだ肩車の順番待ちをしている子もいるし、我慢我慢。

次の子を抱き上げようとしたら

「野分、ちょっと来い!」

いつの間にか入り口に立っていた津森先輩に呼ばれてしまった。

「みんなごめんね。草間先生は大事なお仕事があるからまた明日遊ぼーね♪」

子供達を制して俺の腕を掴むと、サササッっとプレイルームを出た。

「急患ですか?」

「違げーよ!足挫いたのに肩車とかしようとしてるバカを連れ出しただけだ!」

うっ・・・急患は俺ですね。

「診てやるから処置室行くぞ。」

「はい・・・」




触診をして念のためにレントゲンを撮った。

骨は折れていないし、ヒビも入っていないけど・・・踝の辺りが赤く腫れ上がって動かすと痛い。

「捻挫だな。お前、明日休みだろ?今夜はもう帰っていいから安静にして次の出勤までに治してこい。」

「すみません。」

急患が来たら急いで処置に向かわないといけないし、長時間立ちっぱなしになることもしばしばだ。こんな足では足手まといになってしまう。

子供達のところに行かずに休憩していれば・・・なんて後悔はしていないけれど、子供達の予測不可能な行動に対応できなかった自分の未熟さに溜息が洩れる。

下手をすると盛大に転んで肩車をしていた子や足元にいた子に怪我を負わせていたかもれない。

そう考えると、子供達に申し訳なくてしょんぼりしてしまう。こんなことヒロさんが知ったらどう思われるか・・・

「先輩、ヒロさんには黙・・・って・・・」

遅かった。

俺がしょぼくれている間に先輩は受話器を取って家に電話をかけていた。

「つーことなんで、今から野分送って行きます。絶対安静でお願いしますね♪」

『絶対』に力を込めてそう伝えると、受話器を置いた。

「どーしてヒロさんに言っちゃうんですか〜」

「だって、ちゃんと報告しとかないと、お前カッコつけて上條さんの前では平気な顔すんだろ?」

うっ・・・図星過ぎて返す言葉が無い。

「早く治すためには上條さんの協力が不可欠だ。ついでに、そのしょんぼり顔もどうにかしてもらえ!」

明日は久々にヒロさんと休日が被るのに・・・大反省会の予感です・・・
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