純情エゴイスト〜のわヒロ編〜
□ツンツンヒロさん♪
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朝食の準備をしているとヒロさんが起きてきた。
「野分、おはよう。」
「おはようございます。」
「顔洗ってくる。」
ヒロさんは眠そうに目を擦りながら洗面所に入っていった。
俺と一緒に寝た翌日は、何度起こしても起きてくれなくて遅刻ギリギリになってしまう日が多いのに今日は珍しいな。
もしかするとどこか具合が悪いのかも…
そんなことを考えながら、朝食を並べているとヒロさんが戻ってきた。
「今日も旨そうだな。野分、ありがとう♪」
ヒロさんはにっこりと笑うと俺の前まで来て、ギュッと抱きついてきた。
え!?何、これ?かわいい///
いつもとは明らかに様子が違うヒロさんにドキドキしてしまう。
今日は何か特別な日だっけ?考えてみたけれど、何も思い当たらない。
やっぱり、ヒロさんどこか具合が悪いのかなぁ…
嬉しそうに俺に抱きついているヒロさんをそっと引き離して、額をコツンとくっつけてみた。熱は…ないみたいだ。
「野分?どうしたんだ?」
急に熱を確認されて、ヒロさんは不思議そうな顔をしている。
「ヒロさん、どこか体調悪くないですか?頭が痛いとか、身体がだるいとか…」
「別に、大丈夫だけど。」
見たところ異常はないようだけど、やっぱりおかしい。もう少し様子を見てみよう。
朝食を食べながら、ヒロさんをさりげなく観察する。
俺の作った朝食をとても美味しそうに食べてくれている。そんなヒロさんがかわいくて思わず頬が緩んでしまう。
「ヒロさんと一緒に朝ごはん食べるの久しぶりですね。」
「そうだな。いつも朝起きられなくてごめんな。」
「あ、そういう意味じゃないので、謝らないでください。」
「今日も遅番なのに俺より早く起きて朝食作ってくれてありがとう。」
そう言うと、ヒロさんは優しく微笑んでくれた。天使のような笑顔に、嬉しくて感動しそうになってしまう。
でも、ヒロさんがいつもと違うのも明らかで、ちょっぴり不安になる。
食事が終わると、ヒロさんはコーヒーを淹れてくれた。
去年のクリスマスにプレゼントしたペアのマグカップがテーブルに並ぶ。普段は恥ずかしがって、俺がいない時にしか使ってくれないのに…
ヒロさんがこういうことをしない人だってわかってるから、不安になる…
「ヒロさん、今日はどうしちゃったんですか?」
「なにが?」
「いつものヒロさんと違います。もしかして…俺のこと嫌いになりましたか?」
ヒロさんは真っすぐに俺の顔を見ていたけど、テーブルに手をついて身を乗り出すと、俺の唇にそっと唇を重ねた。
ヒロさんからキスなんて…めったにしてくれないのに///
触れるだけのキスをして、俺の髪を優しく撫でると、
「俺がお前のことを嫌いになるわけねーだろ///」
と少しはにかんだように言ってくれた。
まだ朝なのに、そんなこと言われたら理性が崩壊しそうです…
ヒロさんは新聞を読みながらコーヒーを飲みはじめた。何事もなかったかのように落ち着いている。
やっぱり変だ…
コーヒーを飲んでしまうと、ヒロさんはネクタイを締めて仕事に行く支度を始めた。
ジャケットを着ようとしたところで動きが止まる。俺の方を見て、少し寂しそうな表情を見せた。
「もう少し野分と一緒にいたい…今日、休みならよかったのにな…」
「ヒロさん、今日は休んだ方がいいです!いつもと違いすぎて心配です!」
そう言って引きとめたら、ヒロさんは不安そうな俺の顔を見てクスッと笑った。
「俺が休んだら授業を受けにくる学生達に申し訳ないだろ。俺は大丈夫だから、そんなに心配すんな。」
そう言って靴を履くと玄関の扉を開けた。
「じゃあ、行ってくる。」
「いってらっしゃい。何かあったらいつでも連絡ください。」
遠ざかって行くヒロさんの背中を見えなくなるまで見送った。