純情エゴイスト〜のわヒロ編〜
□開雲見日☆
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今日は珍しく時間通りに仕事が終わった。早く帰ればヒロさんと一緒に夕食が食べられるかもしれない。
ウキウキしながら自転車を漕いでいると、遥か前方にヒロさんらしき人影を見つけた。
後ろからゆっくりと近づいて、服装と足音を確認♪やっぱりヒロさんだ。
「ヒロさん!」声をかけると、ヒロさんはビクッとして振り向いた。
「わっ…あ、野分か?いきなり耳元で声かけるんじゃねーよ!」
「ごめんなさい。ビックリさせちゃいましたね。」
「仕事、終わったのか?」
「はい。ヒロさんがこの道通るなんて珍しいですね。」
「ああ、ちょっと寄り道してて。」そう言うとヒロさんは小さくため息をついた。なんだか疲れているようだ。
「お仕事、忙しいんですか?」
「お前程じゃねーよ。夕飯、何にする?今日俺、夕飯当番だから何か作るし。」
「ヒロさんが食べたいです。」
「バカ!外でそういうこと言うなって言ってるだろ!それに俺は食い物じゃねー。」
「ヒロさんは美味しいで…」
(ボカッ!!)殴れてしまった。
あれ?今何か不思議な匂いが…
ヒロさんに顔を近づけてクンクン匂いを嗅いでいると(パシッ!!)顔面に手の甲が飛んできた。
「痛った…ヒロさん痛いです〜」
「なに人の匂い嗅いでんだよ。犬かテメーは!」
「すみません。でも、ヒロさんから何か嗅ぎ慣れない香りがした気がして。」
「なんか臭うのか?」ヒロさんは袖を顔に近づけてクンクンしている。なんだか可愛い♪
「いえ、俺の気のせいかもしれません。夕食作るの俺も手伝います。」
ヒロさんと並んで歩きながらたわいもない会話をしているだけなのに、とても満たされた気分になる。
ニコニコしている俺にヒロさんは
「テメーまた変なこと考えてるんじゃねーだろーな?」と、警戒しているようだ。
「変なことなんて考えてません。ただ、ヒロさんと仲良く夕食を作って、一緒に食べて、お風呂も一緒に入って、朝までずっと一緒にいられたらいいなって思っていただけです。」
しらっと答えると、ヒロさんは
「お前、よく平気でそんな恥ずかしい台詞が言えるよな…」
と呆れたような顔をしている。
「俺、前に言いましたよね?『これからはヒロさんをもっともっと大切にします』って。」
「バカ野分 ///」
こんな日が毎日続けばいいのに…ヒロさんと過ごす時間は俺の宝物だ。
翌朝、ヒロさんはいつもより早く家を出た。
やっぱり仕事が溜まっているいるのだろうか?
洗濯物を干していると、下の道をヒロさんが歩いて行くのが見えた。
あれ?駅はそっちの方向じゃないのに、どこに行くんだろう?
なんとなく嫌な予感がして、不安になる。
遠ざかっていく彼の後ろ姿は少し寂しげに見えた。