純情エゴイスト〜のわヒロ編〜
□大切な物
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「もしも、大地震がきて1つだけしか持って逃げられないとしたら何を持って行きますか?」
看護師さんの問いかけに子供達が口々に答えている。
「お水!」「貯金通帳」「ランドセル」大きい子達は結構現実的だ。
「クマちゃん」「おやつ」「絵本」小さい子達のかわいらしい回答も聞こえてくる。
どうやら、今子供達の間で流行っている心理テストらしい。
俺ならやっぱり「ヒロさん」かなぁ?俺が考えていると背後から声がした。
「野分なら上條さん抱えて逃げそうだよな〜」
「津森先輩!なんで俺が考えてることわかるんですか?」
「図星!?でも、この心理テスト『物』限定だから人間はダメらしいぞ」
「そうなんですか…じゃあヒロさんの本棚を…」
「本棚って…本ごと担ぐのか?」
「はい♪ヒロさんに喜んで欲しいです。先輩は何にするんですか?」
「俺はこれ♪」先輩はポケットから1枚の写真を取りだした。
写真に写っているのはヒロさん…しかも満面の笑顔だ。
「先輩!!いつ撮ったんですか?俺のヒロさんを勝手に撮らないでください!!」
「はいはい、冗談だって。この写真、お前にやろうと思ってたんだ。」
「俺に?」
「上條さん、よく待合室でお前のこと待ってるだろ?それで、お前の姿が見えるとほんの一瞬だけ笑顔になるんだ。これはその瞬間の一枚。撮るの大変だったんだぞ。」
ヒロさん、俺に会う時いつもこんな顔してたんだ ///
俺の知らないヒロさんの一面を先輩が知っていたことは悔しいけれど、それよりも嬉しさが勝って頬が緩む。
「ありがとうございます。宝物にします。」
「ちなみに心理テストの答えは、今一番大切な物だって。単純だよな〜」
今一番大切な物か…俺にとっての一番は「ヒロさん」。ヒロさんがいてくれれば何もいらない。