純情エゴイスト〜のわヒロ編〜
□素直なヒロさん♪
1ページ/2ページ
マンションの駐輪場から部屋を見上げると、明かりが消えていた。
時刻は午前2時。今日帰宅することは伝えていなかったので、ヒロさんは眠ってしまったのだろう。
家に帰るのは2週間ぶりだ。
何度か帰宅できそうな日があって、ヒロさんに「今日は帰ります」とメールをしたのだけれど、結局急患が入って帰れなくなった。
晩ご飯の用意をして待っていてくれたヒロさんをがっかりさせてしまったのではないかと、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
早くヒロさんを抱きしめたいけれど、今夜は寝顔を見るだけで我慢しよう。
ヒロさんを起こさないように静かにドアをあけて、小さな声で「ただいまです。」と言った。
部屋に入ると、ヒロさんの部屋のドアの前に何か白っぽい小さなものが見えた。
疲れているのかな?と目をこすると、その小さいのはヒロさんの部屋の前でピョンピョン跳ねだした。
どうやらドアノブを回して部屋に入ろうとしているらしい。でも、慌てているせいか手が届かずに焦っているようだ。
小さいのが一瞬俺の方を見た。「ヒロさん?」俺は夢でも見ているのかな?その小さい人?はヒロさんをそのまま4分の1くらいに縮めたような感じでとってもかわいい。
でも、泣いていたのだろうか?目が真っ赤になっている。
小さなヒロさんは部屋に入るのを諦めたらしく飛び跳ねるのを止めて、壁にぺたりと貼りついてしまった。両手を真っすぐ上にのばして壁にくっついたまま息を止めている…
どうやら隠れているつもりらしい。
(ヒロさん、バレバレですよ)と思いながらも、気付かないふりをして荷物を置くと、シャワーを浴びにバスルームに入った。
どうやら、俺はだいぶ疲れているらしい…ヒロさんの幻覚が見える…
風呂からあがると、洗いたてのパジャマが用意されていた。
(ヒロさん、起しちゃったかなぁ?)
パジャマを着て、ヒロさんの部屋のドアをそっと開けると、ヒロさんはベッドですやすやと眠っている。
起き上った形跡はないようだ。
(あれ?寝てる…)
不思議に思いながら、水を飲もうとリビングに向かった。
水を飲んでいると、冷蔵庫の陰から視線を感じた。横目でそちらを見ると…
さっきの小さいヒロさんだ!!
(あそこに隠れてるつもりなのかな?でも、ヒロさんは部屋で寝ていたし、この人は一体何者?やっぱり幻覚なのかなぁ…)
コップを置くと、ゆっくりと小さなヒロさんの方へ近づいてみた。
ヒロさんは俺に見つかっていないと思っていたらしく、慌てだしたが、冷蔵庫の隙間にいるので逃げ場はない。後ろを向いてしゃがみこんでしまった。
俺はヒロさんの頭に手を置くと「大丈夫です。」と声をかけた。
小さなヒロさんは、ゆっくりと俺の方を振り返る。それから、小さな声で「のわき、お帰り。寂しかった…」と呟いた。