☆彡秋のエゴイスト

□真心を君に
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Side:弘樹

「宮城教授、コピー終わりましたよ…って仕事サボって何読んでるんですか!!」

教授の方を振り向くと、さっきまで熱心に読んでいた巻物が、いつの間にか占い雑誌に代わっていた。

こっちは学会に間に合わないから手伝ってくれと泣きつかれて自分の研究そっちのけで資料作りを手伝っているというのに…

「だ〜か〜ら〜眉間に皺寄せな〜い!ちょっと息抜きしてただけだ。そんなに怒ることないだろ?」

怒りで肩を震わせている俺に対して、宮城教授は余裕顔だ。

「宮城教授…やる気がないならもう手伝いませんよ!」

「はいはい。俺が悪かった。でも俺は切羽詰まると身の周りを片付けたくなるんだよ。それで片付けてたらこの雑誌がでてきてつい…」

「その試験前の中学生みたいな癖、いい加減に直してください。次は何をすればいいんですか?」

半分呆れながら指示を仰ぐ。

「次はこっちの資料をコピーして欲しいんだが、その前にお前も少し休め。適度な休憩も必要だぞ。」

そう言えば、朝から講義やら教授の手伝いやらで昼飯も食べていなかった。時計の針は午後2時を指している。

「そうですね、昼飯まだだったので食べてきます。」

自室に戻ろうとすると、教授に引きとめられた。

「昼飯、弁当だったらこっちで一緒に食わないか?俺もこれから飯にするから。一人で食うのも味気ないだろ。」

「はい、じゃあ弁当取ってきます。」

部屋に戻って、鞄から弁当を取りだす。今日は野分の手作り弁当だ。

野分は朝時間があると必ず弁当を作る。

病院の食堂の料理は栄養バランスが良く味も悪くないのだがメニューがローテーションで回ってくるので毎日食べていると飽きてしまうらしい。

そして、自分のを作るついでだからと言って俺の分も作ってくれる。

野分の作る弁当は彩りもバランスも良くて、味も言うことなしだ。だから、毎回弁当箱の蓋を開ける時はうきうきした気分になる。

弁当を持って教授の研究室に行くと、教授はコーヒーを用意してくれていた。

教授にお礼を言ってソファーに腰を下し、弁当の包みを広げた。

教授も重箱のような包みを広げ出した。

「愛妻弁当かー。いつもいいよな〜」

俺の弁当を教授が羨ましそうに見つめている。

今日は唐揚げに、焼き鮭、出汁巻き卵、トマトとブロッコリのサラダ、ご飯はキノコの混ぜご飯でパンダ型に切りぬいた海苔が飾られている。

「教授はいつものキャベツ弁当ですか?」

そう、でも1段目は自分で詰めたからキャベツ以外もあるぞ。それにキャベツ料理も少しずつだが旨くなってるんだ。」

そんなことを話しながら、弁当を食べる。

あ、今日も旨い!野分が作ってくれたと思うと嬉しくて、元気もでてくる。

今日も残業になりそうだが、この弁当のおかげで夜まで頑張れそうだ。

野分、いつもありがとう…心の中でお礼を言った。



食事が終わってコーヒーを啜っていると、宮城教授がさっき読んでいた占い雑誌を持ってきた。

「この姓名判断、よく当たるって学生に勧められて買ったんだ。お前も占ってやるよ。」

「結構です。俺はそういうの信じないんで。」

教授はどうしてこんな女みたいなことが好きなんだろう?といつも不思議でならない。

前に、ラッキーアイテムがヒトデだとか言って、ヒトデ型のキーホルダーを学生に借りていたこともあった。

「そんなこと言わないで付き合えよ。えーっと上條弘樹…」

メモ用紙に俺の名前を書いて画数を数えはじめた。そんなことをしている暇があるなら論文を書けばいいのに…

「それから、草間野分っと」

「ちょっと教授!何で野分まででてくるんですか?」

俺の名前の隣に野分の名前を並べられて思わず赤面してしまう。改めて名前を並べられるとなんだか照れくさい。

「これ、相性占いだから。え〜っと上條と草間君の相性は…」

あ…なんかドキドキしてきた。占いなんて当てにならないとは思うのだがほんの少しだけ気になる。

「…20%だと。」

「20%って何なんですか!」

残念な結果に思わず大きな声を出してしまった。

「べ…別に占いなんて信じませんけどね。」

慌ててフォローする俺に、宮城教授は本に書かれている結果を読みだした。

「お前が相手を振りまわしてしまわないように注意しないとダメらしいぞ。我儘に振舞うと知らず知らずのうちに相手を傷つけてしまうって書いてある。」

うっ…当たっていないと否定したいところだが、思い当たる節がないとも言えない。

俺が野分の話をちゃんと聞いていなかった所為で野分を振りまわしてしまったこともあるし、

俺は我儘だから知らないうちに野分を傷つけるような言動をとっているかもしれない。

ヤバい、急に不安になってきた…

「どうした上條、信じないっていう割には、随分と深刻な顔してるぞ。」

「え!?そ…そんなことありませんよ。さあ、仕事、仕事しましょう!早くしないと学会に間に合いませんよ。」

「はいはい、占いなんて当たるも八卦当たらぬも八卦だからそんなに気にするなよ。」

それはそうなのだが…できれはそんな結果知りたくなかった。

グルグルと考えながら、さっき頼まれた資料をコピー機にセットしてスタートボタンを押した。
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