純情エゴイスト〜のわヒロ編7〜

□図書館デート
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今日はヒロさんと一緒に図書館に来ている。

予定では本屋に行くはずだったのだけれど、生憎の雨で。沢山の本を濡れないようにしながら持ち帰るのは大変だからと、図書館に変更になってしまったんだ。

高いところの本を取ってあげたり、荷物持ちをしたりして、ヒロさんに頼りがいのある男だと見直してもらうチャンスだと思っていたからちょっと残念だけど…

俺よりも新刊を買うのを楽しみにしていたヒロさんの方がずっとガッカリしていると思う。図書館デートでも楽しんでもらえるように頑張ろう!

向かいの席に座っているヒロさんを見ると、頬杖をつきながら少しだけ口元を緩めてテーブルに置かれた分厚い本のページを静かに捲っている。

辞書?百科事典?なんだかよくわからないけど楽しそうだな。

ヒロさんは難しそうな本を読んでいることが多いので、俺も負けじとヒロさんと同じ棚の本を持ってきて読んだりしていた時期もあったけど…

理系の俺が背伸びをしても仕方がないと開き直って、最近は自分に合った本を選んでいる。そんなわけで今日は児童書の棚から絵本を何冊か持って来た。

子供達に読んであげるのに良さそうな本を探すのが目的だけど、綺麗に描かれた挿絵に見惚れたり、ストーリー展開にワクワクしたり、大人の俺が読んでも結構楽しめる。

ヒロさんが言うには、児童書は『子供でも楽しめる本』であって『子供限定の本』ではないらしい。

そして、難しい本を無理に理解しようとして読むより、絵本や児童書をニコニコしながら眺めている方が野分らしくて好きだ…って、言ってくれたんだ。

その時の、照れ臭そうにしているヒロさんの顔を思い出すたびに頬が緩む。

「ふふっ…ヒロさん可愛い///」

「何か言った?」

「あ、何でもありません。」

思わず声が洩れてしまった。静かな図書館では呟き声でも聞こえてしまう。気をつけないと。

ヒロさんは既に本に視線を戻している。

別の本を手に取ろうとした時、少し離れたテーブルに見覚えのある二人組がいるのに気づいた。宮城教授と忍君だ。

あはは…忍君、寝ちゃってる。教授の肩に寄りかかってコックリコックリしている姿が微笑ましい。

教授は忍君がずり落ちないように気を遣いながら、山積みにした本を楽しそうに読んでいる。ヒロさんと同じ顔…二人共、文学を愛してるんだな。

ヒロさんと、宮城教授の表情を見比べていると、教授が顔を上げて…目が合ったので軽く会釈をした。

教授は忍君を指さして肩を竦めるような仕草をしてるけど、満更でもなさそうだ。

俺もヒロさんの隣に座ればよかったかな?

だけど、俺が忍君の真似なんかしたらヒロさんは多分…

『野分?疲れてる?…そろそろ帰るか。』

となって、デートが強制終了になってしまう。

やっぱり向かいの席が正解だ。ヒロさんの顔も見られるしね。

あれ?今のは…

ヒロさんの後ろの本棚の前を高野さんらしき人が歩いて行くのが見えた。奥の棚の前で立ち止まって本の背表紙を眺めている。高野さん…だよね?

高野さんはヒロさんの読書友達の小野寺さんの上司で自称恋人?でいいのかな?

何度か話したことはあるけど、ここは図書館だし、席を立って挨拶に行くのも…

声をかけようか迷っていると、今度は小野寺さんが通りかかった。高野さんに気づかれないように少し距離を置いているようだ。

俺が見ているのに気づいて…真っ赤になっている。

『デートですか?』

高野さんの方を指さしてジェスチャーで聞いてみたら

『ち…違いますっ!!』

慌てた様子で、パーにした両手を顔の前でブンブンと振っている。

そんなことをしているうちに、高野さんに見つかって…腕を掴まれて強制連行されてしまった。デートの始まりですね♪

ここの図書館は大きいし、レアな本も多いから気に入ってるってヒロさんが言ってたけど、類は友を呼ぶのかな。

宇佐見さん達は…流石にいないか。

美咲君、本を読むと頭痛と目まいに襲われるとか言ってたし。宇佐見さんならきっと美咲君が楽しめる場所を選ぶよね。
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