純情エゴイスト〜のわヒロ編7〜
□時には素直に…
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ゴールデンウィークなんて何のためにあるんだろうな。日本人休み過ぎだろ。
カレンダーに並んだ赤文字の日付を睨みつけて、はーっと深い溜息をついた。
毎年のことながら、野分のカレンダーにゴールデンウィークなるものは存在しない。
命を扱う仕事を選んだ以上、プライベートよりも仕事を優先するべきなのは当然のことだ。病人をほったらかしにして平気で遊んでいられる医者なんて最悪だと思う。
交代で休むにしたって家族持ちの医者が優先されるのは仕方がないことで、まして下っ端の研修医に休日を選ぶ権限はない。
野分はいつだって真面目に一生懸命仕事に取り組んでいる。そのことを俺は誰よりもわかっているつもりだ。
だから、我儘は言っちゃいけない。自分が休みで時間があるからって、野分と一緒に休暇を楽しみたいなんて考えちゃダメだ。
それに、連休中ずっと帰って来ないわけじゃない。夜には帰宅できる日もあるだろうし、明け方帰宅して夕方から出勤の日だってあるかもしれない。
無論、疲れた身体を休めなければならないから、連れまわすことはできないけれど、傍にいてお互いの息遣いを感じられるだけでも十分だ。
だけど、そんな希少な時間にすれ違ってしまうこともしばしばで。俺が留守にしている間に帰っていたりするとやるせない気持ちになってしまう。
帰る時に連絡をくれれば、本屋にも実家にも行かずにここで待ってるのに…
『いつ帰る?』とか『帰れるなら連絡入れろ』とか…言ったら、俺が野分を待ち焦がれていることが伝わってしまいそうで…負担になるのが怖くて予定を聞くことすらできずにいる。
休める日があるのかも、いつ帰って来るかもわからないまま、一人の休日を過ごすのは正直しんどい。
普段なら俺も仕事が忙しくてこんな気持ちになる暇なんてないのに、無駄に長い休みが俺を苦しめる。
野分に会いたい。触れたい。寂しい…
一人で食事をしている時、リビングで寛いでいる時、バスタブに浸かっている時…零れ落ちる涙にはっとなることもしばしばで…自分の弱さを思い知らされる。
昔はこんなじゃなかったのに。一人でも全然平気だったのに。全部野分の所為だ。
考えれば考える程ネガティブになってしまう。誰もいねーし、ちょっと声にだしてみるか。
「野分とデートしたい!」
「二人でどこか行きたい!」
「俺を満足させろ!バカっ!!」
我ながらガキっぽいとは思うが…ストレス発散にはなったかな。
あれ…なんか変だ…自分の声が遠くから聞こえる…
「ん…んーーーん…」
ここは…?
いつの間にかソファーで眠ってしまっていたようだ。自分の声で目が覚めるとか…
苦笑しなら身体を起こすと同時に、人の気配を感じてのけ反った。
「おわっ!!…の、野分!?」
野分はソファーの前で正座をしていて、赤く火照った顔で俺を見つめながら、ハァハァと荒い息をしている。
「どうした!?具合悪いのか!?」
「無理です…」
無理って…何が?
「もう我慢できません!ヒロさん、ごめんなさい。抱かせてくださいっ!!」
「えっ…?おっ…おいっ!!」
いきなり飛びつかれて唇を塞がれてしまった。
素早く服を剥ぎ取って身体をまさぐる逞しい腕に抗う術もなく野分に身を任せる。
コイツ、余裕なさすぎ…
病院で何かあったのだろうか。いつもより激しい…
うっ…指が…いきなりそこかよ!?
「気持ちいいですか?」
「見ればわかるだろ///聞くなっ…」
「一緒にイキましょうね。」
なんか…焦ってる?ガッツかれるのは嫌じゃねーけど…
野分のヤツ、身体がメチャクチャ熱い。息も荒いし、下もガッチガチだし…
「ちょっ…待った!」
「無理です!!」
野分のことが心配だけど、今は好きにさせてやるしかねーか。
あまり刺激しないように、優しく背中を撫でながら野分を受け入れた。