純情エゴイスト〜のわヒロ編6〜
□買い物デート?
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スーパーに行こうと自転車を走らせていたら向こうからヒロさんが歩いてきた。
「ヒロさん!お疲れ様です。」
元気に声をかけると、ヒロさんはビックリしたように目をパチパチさせていたけど
「おう、お疲れ。」
ちょっとだけ嬉しそうに頬を緩めて歩みを止めた。
ヒロさんの前で自転車を止めてにっこりと笑いかける。
「すみません、今から買い出しに行くので晩飯はちょっと遅くなります。先にお風呂に入っててください。」
昼頃帰宅してちょっとだけ仮眠を取ろうと思ったら夕方まで寝てしまった。
ヒロさんと一緒にお風呂に入りたかったけど、今日は我慢しよう。
「じゃあ、俺も一緒に行く。」
「はい…?」
意外な返事に一瞬思考回路が止まってしまった。あ、そっか!
「ヒロさんも何か買いたい物があるんですね!」
「いや、別にねーけど。」
「へっ…?」
用もないのに、なんで?
「もしかして、俺と一緒に買い物がしたいとか思ってくれてます?」
そうだとしたらもの凄く嬉しい///
「んー…誰もいない部屋に帰るのもなんだし、元々今日は俺が飯作る当番なのにお前に買い物させるのもどうかと思って。」
「ヒロさん…こういう時はちょっと赤くなって俯きながら『うん///』って言ってくださいよ〜」
「嫌だ!」
そんなにハッキリ断らなくても…
「あ、でもお前チャリだし、一人で行く方が速いか?」
「ヒロさんと一緒がいいです。自転車は荷物を乗せるのに使います。」
理由はどうあれ、ヒロさんと買い物デートができるチャンスを逃すわけにはいかない。
「鞄乗せちゃってください。」
「ああ、サンキュ。」
ヒロさんが鞄を乗せるのを待って、ゆっくりと歩きだす。
ここからだとスーパーまで5分くらいだ。
「今日は暖かかったな。スプリングコート着てると暑いくらいだ。」
「そうですね。でも夜はちょっと冷えますね。」
「それはお前が半袖だからだ。この時間にTシャツ1枚で出てくるとかねーから!しかも真黒だし!」
「あはは…そうですね。気をつけます。」
暗い時間に帰宅することが多いから、車に跳ねられないようにもっと明るい色の服を着て行けとヒロさんによく注意される。
それでいて、『お前は黒が似合うな』とか言うから困ってしまう。
自分でも黒は好きだし、合わせやすいから楽なんだよね。
「そうだ、今度俺の服選んでください。」
「わかった。でも、お前も一緒に探せよ。椅子に座って待つのはなしだからな!」
「はいっ。」
俺のことを考えながら一生懸命選んでくれるヒロさんが可愛くて、ついつい観察モードに入ってしまう。
デパートで店の前に椅子があったりするとつい座り込んでじっくりと魅入ってしまうんだ。そして、ヒロさんに怒られる。
「あれ?ヒロさんコート替えました?」
暗がりで気づかなかったけど、街灯の下でよく見たら見覚えのないコートを着ている。
「ああ、貰いもんだけどな。」
「えっ!!だ…誰に貰ったんですか!?宇佐見さんですか!?」
「なんで秋彦が俺にコートくれるんだよ…親が送ってきたんだ。ニ着買うと安かったらしくて、父さんの買うついでに買ったんだと。」
「ああ、そうだったんですね。」
どうして俺はいつも自分からヒロさんを宇佐見さんとくっつけようとしてしまうんだろう。未だに宇佐見さんを意識してしまう自分が嫌だ。
「秋彦のことなんて気にすんな!って言いたいところだが、お前が嫉妬してくれるとちょっと安心する…」
「えっ?」
「…かもしれない。」
「ヒロさん!!」
もう!一瞬ドキッとしたのに、酷いです〜