☆彡春のエゴイスト2
□二人で過ごす休日
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Side 弘樹
麗らかな春の朝。
目を覚ました俺を見つめているのは漆黒の瞳。
「おはようございます♪」
「おはよ。」
いつから起きていたのだろう?寝顔を見られるのは嫌だと何度も言っているのにコイツは聞きやしない。
「朝ご飯作りますね。ヒロさんはもう少し寝てますか?」
「いや。シャワー浴びてくる。」
裸のままベッドから降りると、野分は慌てて
「ヒロさん、朝から煽らないでください。パンツくらい履いてくださいよ〜」
床に投げ捨ててあったパンツを投げて寄越した。
「一度履いたもん履けるかよ。」
「じゃあ、これ。洗濯機に突っ込んでおいてください。」
渡されたシーツで前を隠すと野分はやれやれといった様子で服を着始めた。
脱がせるときは容赦なくあっという間に剥ぎ取るクセに、俺が裸のままでいるとこれなんだから。
散らばっていた服を集めながら、野分に軽く蹴りを入れる。
「野分、それも寄越せ。さり気なく昨日と同じ服着てんじゃねー。」
「あはは…つい。」
周りの人間に対しては細かいことまで気が利くのに、自分のことは二の次で…
「これもお願いします。」
渡されたスウェットはちょっと着ただけなのにもう温かくなっていて、ふわりと野分の匂いがした。
なんだか洗ってしまうのが勿体な…くない!!しっかりしろ!自分///
「ヒロさん?顔が赤いですよ。」
「なんでもねーよ!一瞬自分を見失っただけだ!」
キョトンとしている野分を残して脱衣所に向かう。
野分とゆっくり過ごせる朝は希少で…他愛のないやり取りの一つ一つが愛おしい。
会えない時間が長いからこそ、一緒に暮らしていることや野分のことが好きだという気持ちを再確認させられる大切なひと時なんだ。
シャワーと洗濯を済ませて、野分とお揃いの指輪を嵌めた。ずっと一緒にいる証・・・
キッチンに行くと、焼き魚の香ばしい匂いが漂ってきた。
「もうすぐできますよ。」
野分がコンロから魚を出している間に、ご飯をよそって箸を並べる。
「味噌汁もうできてるのか?」
「はい。」
お椀に味噌汁を盛っていると、後ろから野分が抱き着いてきた。
「こうして共同作業してると、夫婦って感じがしますね♪」
「勝手に言ってろ。バーカ!」
同じことを考えていた俺もバカだけど。
チラリと見上げると、野分が物欲しそうな顔をしていたので軽く唇を重ねてやった。
朝っぱらから何をやっているんだか。
「腹減ったからさっさと並べろ!」
「アハハ…ヒロさんは色気がないなぁ〜」
野分のいる休日。楽しい一日になりそうだ。
家で二人きりで過ごすのもいいけれど、天気が良いので出かけることになった。
「何処か行きたいところあるか?」
「ヒロさんと一緒に桜が見たいです。あと、駅の向こう側の本屋さん。確か今日がリニューアルオープン日でしたよね?」
「そうだった!お前、よく覚えてたな。」
「ヒロさんが喜びそうな情報はチェックするようにしてるんです。」
俺の為に?
その気持ちだけで十分嬉しい///
「野分…」
「なんですか?」
「手!」
「手がどうかしました?」
野分は自分の掌を広げて不思議そうに見つめている。
「繋いでやるって言ってんだよ!この道人通り少ないから…今、そういう気分だし…」
「ヒロさん///」
満面の笑みで差し出された手をしっかりと握る。
ちょっと照れくさいけど、好きな人を喜ばせたいと思う気持ちは負けてないからな。
「デートらしくなってきましたね。」
「ただの散歩だ!散歩!」