純情エゴイスト〜のわヒロ編4〜
□君に会えなくなる前に…
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ENTERキーを押すと同時にチャイムがなった。
区切りもいいし、ちょっと休憩しよう。パソコンをスリープにして立ち上がった。
インスタントコーヒーを淹れていると、ノックと同時に宮城教授が入ってきた。
「かみじょー、それ二人分♪」
「何しに来たんですか?資料なら昨日揃えましたよね?」
マグカップを2つ並べながら、教授を睨みつける。
お盆で休みになる前に資料を揃えたいと泣きつかれて昨日は半日がかりで教授の手伝いをしたのに…まだ何かやらせるつもりなのか?
「ゲッ!そんな怖い顔すんなよ。ここ通ったらコーヒーの香りが漂ってきたから飲みたくなっただけだ。」
ここはカフェじゃねーんだけど…
「はい。教授の分できましたよ。」
「サンキュー♪」
「それ飲んだら出ていってくださいね。俺、今日中に終わらせたい仕事があるんで。」
「はいはい。」
教授は肩を竦めてソファーに腰を下ろすと、コーヒーを啜りはじめた。
マグカップを片手になんとなく窓辺に寄って空を見上げた。
どんよりとした曇り空…明日から連休だというのに、台風の影響で前半はぐずついた天候が続くらしい。
野分も仕事って言ってたし、墓参りは後半に回すとして、明日は何しよう…
チラッとパソコンに目を向けて、ブンブンと首を振る。
締め切り間近でもないのに休みにまで仕事とか悲し過ぎる。
「お前も連休中に論文書くのか?俺んちで一緒にやる?」
「遠慮しときます。教授と違って俺はコツコツ進めてるんでまだ余裕ありますし。」
夏休みの宿題じゃあるまいし…
教授と一緒にいると学ぶことも多いけど、それ以上に手伝いをさせられそうで…嫌な予感しかしない。
「もしかして彼氏殿とデートの予定でもあるのか?」
「そんなのありませんよ。教授はどうなんですか?こんなに仕事溜め込んで、高槻君に愛想尽かされないようにしてくださいね。」
高槻君は長い夏期休暇中一人で何をして過ごしているんだろう。教授がお盆で休みになるのを楽しみにしているのではないだろうか。
「かみじょー!俺だって気にしてるんだから怖いこと言うなよ。前半は仕事漬けだけど、日帰り旅行くらいは計画してるんだ。」
へー…教授なりに考えてはいるんだ。
俺も野分と…出かけられなくてもいいから少しでも一緒に過ごしたい。一日…いや半日でもでいいから…
一人で過ごす連休はいつもに増して寂しさが募る。一緒に住んでいるから尚のこと。
連勤だって言ってたけど、手が空いてひょっこり帰ってくるかもしれない…いやいや、そんな都合良くいくわけねーよな。期待しないでおこう。
浮かない気持ちで窓の外を見ているとポツリポツリと窓に雨粒が落ちてきた。
「雨降ってきたみたいですね。」
「えーっ!最悪。頼むから帰るまでにはやんでくれよ…」
教授の嘆き声に反応するように…ザザーッ!!
バケツをひっくり返したような大雨になった。
「みーやーぎ教授…」
「俺の所為じゃねーからっ!」