純情エゴイスト〜のわヒロ編4〜

□Sweet Night
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残業して帰ってきたら玄関から野分が飛び出してきて…

「ヒロさん!お帰りなさい!」

「野分!?ただいま…お前、何してんだ?」

満面の笑顔で迎えられて面食らっていると、野分はニコニコしながら

「窓からヒロさんが見えたので待ちきれなくて出てきちゃいました。」

と言って、俺の鞄をサッと取りあげた。

「ヒロさん、早く入ってください♪」

舌を出しながら尻尾をブンブン振っている大型犬の姿が重なって思わず笑いが洩れる。

「そんなに急かすなって。今靴脱ぐから…」

俺の帰りを心待ちにしてくれていたようだが…晩飯は食べて帰るってメールしたし、抱きついてこないところをみるとエロ妄想してるわけでもなさそうだし…

野分は爪先立ちで踵をあげたり下ろしたりしながら見るからにウキウキとした様子で待っている。

靴を脱ぐと直ぐに俺の手を取って引っ張り出した。

「お前どうしたんだ?散歩の催促してる犬みたいだぞ。」

「ヒロさんに早く見てもらいたくて。」

「何を?」

「いいからこっちに来てください。」

野分に連れられてリビングに入ると、ローテーブルの上にノートや筆記用具が散らばっていて…

「ヒロさん、丸付けお願いします!」

野分が差し出してきたノートにはぎっしりと回答らしきものが書き込まれている。

「丸付けって…これなに?」

手に取ってよくよく見ると、心当たりのある回答が並んでいる。

「これって、俺が作った問題の答えか?」

「はい!机の上にテスト問題のメモがあったので挑戦してみました。」

前期試験が近いからぼちぼち問題を作り始めているのだが、まさかそれをやるとは…

「テメー…」

睨みつけると、野分は戸惑った様子で頭を下げた。

「勝手なことしてごめんなさい。部屋の掃除をしている時にたまたま見つけて…メモは汚さないようにちゃんとノートに書きました。」

「そういう問題じゃねーよ。明日も仕事あんのに、身体休めないでなにやってんだよ!」

こっちは野分が過労でぶっ倒れるんじゃないかって毎日心配してんのに、俺の部屋の掃除なんてしてんじゃねーよ!おまけに医学とは無縁の作りかけのテスト問題解くとか…

「もしかして、俺の身体を気遣ってくれているんですか?」

「当たり前だろっ!」

「ヒロさん///」

「怒られてんのに嬉しそうな顔すんな!ボケカス!」

拳を振り落としても野分はまだ間抜け面でニコニコしている。まったくコイツは…

「見てやるからお前は少し休んでろ!」

「はい!」

ネクタイを緩めて鞄から赤ペンを取り出した。

俺だって残業で疲れてんのに、帰宅して早々採点をすることになるなんて思ってもみなかった。

休んでろって言ったのに、野分は床に正座で丸付けが終るのを待ってるし…
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