純情エゴイスト〜のわヒロ編4〜
□カーネーションを君に
1ページ/3ページ
「ヒロさーん、朝ですよー!起きてくださーい!」
寝室のドアを開けてヒロさんに声をかける。
「わかった…起きる…」
ヒロさんは眠たそうに返事をして、少しだけベッドから身を起こした。
「もうすぐご飯できるので、ちゃっちゃと起きてくださいね♪」
ドアを閉めてキッチンに戻った。これで20回目…
耳を澄ませてみてもドアを開ける音どころか物音一つ聞こえてこない。
ヒロさんはまだ起きていないようだ。ちゃんと返事はしてるんだけどな…
綺麗に焼きあがったオムレツをお皿に移して、21回目の声かけに向かう。
一人のときは目覚ましでちゃんと起きるのに、俺がいるとどうしてこうなっちゃうんだろう?
もしかして、俺を信用して甘えてくれてる…とか…?
そうだったら凄く嬉しい///
だけど、いい加減起きてくれないと朝ご飯を食べる時間がなくなってしまう。
「ヒロさーん、おはようございまーす!起きてくださーい!」
声をかけると
「野分?おはよう…もう朝か…」
ヒロさんは袖口で目を擦りながら起き上がった。
「朝ご飯できてますよ♪」
「うん。すぐ行く…」
良かった、やっと目が覚めたみたいだ。ほっとしながらキッチンに戻った。
テーブルに朝食を並べてコーヒーを淹れていると、バタンとドアが開く音がしてバタバタとヒロさんが走ってきた。
「ヤベー、遅刻する!!」
ヒロさんはネクタイをサッと締めて上着を羽織ると鞄を手に取った。速っ…
「まだ少し時間ありますよ。ご飯作ったので食べていきませんか?」
「今日は朝から学部会議があるって昨日…」
「言ってません。」
ちゃんと言ってくれればもっと早く起こしたのに。
「あー…すまん。マジで時間ねーからもう行く!」
そう言ったかと思ったらもう玄関で靴を履いてるし…見送りがしたくて玄関に急いだ。
「忘れ物はないですか?」
「ねーよ!じゃあ、行ってくる。」
「いってらっしゃい!」
やるせない気持ちを隠すように満面の笑顔でヒロさんを見送った。
エレベータに乗ることろまで見届けて部屋に戻る。
あーあ、ヒロさんと一緒に食べたかったな…
食卓には二人分の朝食がまだ湯気を立てている。
ヒロさんに美味しいって言って欲しくて心を込めて作ったのに…なんて昔はちょっとだけいじけていたけど、最近ではもう慣れっこだ。
今度からは心を鬼にして起こさなくちゃ!…と、いつも反省するんだけど、ヒロさんの可愛い寝顔を見たら叩き起こすなんてできるわけがない。
はーっと深い溜息をついて腰を下ろした。
「いただきます。」
一人でもちゃんと食べないと。会議中にお腹が鳴らないようにヒロさんの分も…