純情エゴイスト〜のわヒロ編4〜
□恋敵は津森先輩?
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バッグに手を突っ込んで鍵を探りながら、エレベーターを降りた。
リビングにはまだ灯りがついていた。早くヒロさんの顔が見たくて足早に玄関に向かう。
あれ?…あれれ?
扉の前で足を止めてバッグの口を大きく開いて覗きこんだ。
鍵…ロッカーに忘れてきたかも…
着替えの時に急いでいてバッグから飛び出した鍵をそのままにしてしまった。直ぐに気がついたけど、時間がなかったから後で戻そうと思ってそれっきりだ。
だけど、ヒロさんが起きている時間で良かった。
(ピンポーン)
チャイムを押してヒロさんが開けてくれるのを待つ。ヒロさん早く来てくれないかな〜。
ん〜…ヒロさん?
なかなか出て来てくれない。もしかしたらリビングで寝ちゃってるのかも。
もう一度チャイムを押してみたけど、何の応答もなくて…電話をかけたら留守電に繋がってしまった。
「ヒロさん、ヒロさん!」
仕方がないので近所迷惑にならない程度にヒロさんの名前を呼びながらドアレバーをガチャガチャしていると…
開いた!!
ヒロさん…また鍵かけ忘れたんですね。
鍵を開けっぱなしでヒロさんがリビングで寝ているところに見知らぬ男が入ってきたら…と考えるとゾッとする。
無防備なところも可愛いけど、こういうことはちゃんと注意してもらわないと。
やれやれ…と思いつつ部屋に入ると、バスルームからシャワーの水音が聞こえてきた。
まさかのお風呂ですか!?
寝ている以上に危険じゃないですか〜!!
鍵をしっかりとかけて自室にバッグを投げ入れると、バスルームに直行した。
もう!今日は何が何でも一緒に入りますよ。怒っても嫌がっても引きさがりませんからね!
バサバサと服を脱ぎ捨てて、顔面にお湯を掛けられること覚悟でバスルームの扉を開けた。
「ヒロさん!!」
あれ…?
入って来るな!と怒鳴りつけてくると思ったのに、ヒロさんは大人しくバスタブに浸かっている。そしてシャワーのお湯は勢いよくヒロさんの頭上に降り注いでいる。
「ヒロさん?どうしたんですか?ヒロさん!」
シャワーを止めて肩を揺すりながら声をかけると、ヒロさんはハッとしたように顔を上げて俺の顔を見つめた。
「ん?…ああ、野分か。お帰り。」
「ただいまです。ヒロさん大丈夫ですか?」
「すまん。ちょっとぼーっとしてて…」
「熱があるんじゃ…」
「考え事してただけだから大丈夫だ。」
「そう…ですか…」
体調が悪いわけではなさそうだけど、心配だなぁ…
「それより、お前なに勝手に入って来てんだよ!」
良かった。いつものヒロさんだ。
「入ってきたのが俺で良かったですね♪玄関の鍵開いてましたよ。」
澄ました顔で応戦すると
「うっ…」
ヒロさんは気まずそうに押し黙ってしまった。
「ヒロさん、身体…」
「もう洗った。」
「そうみたいですね。でもまだ洗い残しがあるかもしれません。俺が隅々まで綺麗にしてあげます♪」
ヒロさんの両脇に腕を入れて持ち上げる。ヒロさんは恥ずかしがってバタバタと暴れていたけど、唇をそっと塞ぐと大人しく身を預けてくれた。
「ヒロさん可愛い…」
「勝手に言ってろ!バカっ///」