純情エゴイスト〜のわヒロ編4〜
□ナイト☆アクアリウム
1ページ/4ページ
定時で仕事を終えて帰宅したら灯りがついていて…
「ただいま。」
「お帰りなさい!」
リビングから野分の返事が聞こえてきた。残業しなくて正解だった。今夜は野分と過ごせる。
期待に胸を躍らせて部屋に入ると野分はソファーからピョコンと飛び上がって笑顔で迎えてくれた。
「お疲れ様です。」
今日は夜勤か…
上着を着て、バッグを担いでいる野分の姿を見てちょっとだけ肩を落とす。
「これから仕事?またすれ違いだな。」
「違いますよ。ヒロさん、今からデートしましょう♪」
「はあっ!?」
今からって…もうすぐ7時なんだけど。
「晩飯外で食うのか?」
「それもありますけど、ヒロさんと一緒に水族館に行きたいな〜と思いまして。」
「水族館?」
「はい。津森先輩に教えて貰ったんですけど、3駅先に夜の10時まで営業している水族館があるみたいなんです。」
「ああ、去年リニューアルしたとこか。」
駅の構内にイルカの写真が大きくプリントされたポスターが貼ってあったのを思い出した。
「今日は夕方帰宅して、一応ご飯も作ったんですけど、もしヒロさんが早く帰って来たら出かけたいな〜と思って、ドキドキしながら待ってました。」
「待ってたって、その格好で?」
「はい!2時間くらい。」
出かける気満々のいでたちで2時間も待ってるなんて…マジで残業しなくて良かった。
「あの〜…ヒロさん、疲れてますか?出かけるのが嫌なら、晩ご飯出しますけど…」
真黒な目が不安そうに揺れている。
「疲れてねーよ!支度してくるからもう少し待ってろ。」
「はい!」
野分の方から行きたい場所を言ってくることなんて滅多にないから嬉しくなる。
それに普段ならデートと言ってもファミレスや本屋だけど、今回は水族館だ。
自室に入るとクローゼットを開けて暫し考えた。
何着て行こう…こんなことで悩むなんて初めてかも///
柄にもなく迷ってしまったが、結局、野分に合わせて長袖シャツにジーンズのカジュアルな服装に着替えた。
上着を羽織ってリビングに行くと、野分はもう玄関でピョンピョン飛び跳ねながら待機している。散歩を心待ちにしている大型犬みたいだ。
「お待たせ。」
げた箱からさり気なく野分とお揃いのスニーカーを取り出す。クリスマスに二人で一緒に選んだ靴だ。
靴を履いて野分の顔を見上げると、とても嬉しそうに見つめ返してくれた。
「さあ、行きましょう。」