純情エゴイスト〜のわヒロ編3〜
□動物園に行こう♪
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「あ〜、明日から三連休かー、どうせなら月曜日も休みにしてくれりゃいいのに。」
コピーをとっていた宮城教授が思いだしたようにぼやいた。
三連休?何のことかと机の上のカレンダーに目をやると
「うそ!?今月今日で終わりだ…」
論文の作成に夢中で日付感覚が無くなっていた。明日からゴールデンウィークに突入…カレンダーには色付き文字の日付が並んでいる。
「なに?上條忘れてたの?」
俺の反応に教授はちょっと驚いた様子で尋ねてきた。
「はい。明日も出勤するつもりでいました。」
「マジかー。じゃあ、休みの予定も立ててねーの?」
「全く…」
野分は日曜祝日でも平常営業だから連休なんてとれないんだろうけど…少しくらいなら一緒に過ごせる時間があるのかもしれない。
早めに予定を確認しておけば良かった…
「草間君は?何も言ってなかったのか?」
「ここ数日、すれ違ってばかりで碌に話してないんです。」
「お前らそんなんで大丈夫なのか?」
そんなのはいつものことだ。不安になるようなことは言わないで欲しい。
「大丈夫ですよ。そんなことより、今日のゼミで連休中の課題出さないと。一週間あるからいつもより多めに…」
「お前なー…連休のこと俺に言われて思い出したなんて学生に言うなよ!俺が恨まれる。」
「はいはい。わかってますよ。」
論文のファイルを閉じて課題の作成に取り掛かる。
「俺も上條を見習って課題だしてみるかな…連休中の思い出を五七五にまとめて…とか。」
面白半分でそんなことを言っている教授に溜息が洩れる。五七五って…小学校じゃあるまいし。
「んじゃ、これ連休明けまでの宿題な♪」
「えっ!?」
「聞いてなかったのか?お前への宿題。ちゃんと短冊に書いて提出するように!」
「なっ!?なんで俺が…」
「お前の指導も俺の仕事のうちなんだよ。俺、これでも教授だし♪」
教授はコピーした資料を抱えてニコニコしながら自室に戻って行ってしまった。
冗談じゃねー!なんでこんなことに…
連休中の思い出を俳句に…って言われても、どうせ読書三昧で終わりそうだし、思い出もなにもねーんだけど。
でも提出しなかったら宿題忘れになるのか?鬼の上條が課題こなせないとか…それだけは避けないと…
「ヒロさん、なにブツブツ言ってるんですか?」
風呂上りの濡れた髪をタオルで拭きながら野分が心配そうに尋ねてきた。
「あっ…また独り言言ってた?悪い、お前が心配するようなことじゃねーから。」
「何か悩み事ですか?」
「悩みっていうか…課題が出てて…」
「えっ!?ヒロさんでも課題で悩むことがあるんですか?」
野分はビックリしたように目を大きく見開いて俺の顔を見つめている。
「宮城教授がふざけた課題だしてきてさー。連休中の思い出を俳句にして提出しねーといけないんだ。」
「俳句なんて宮城教授らしいですね。なんだか楽しそうです♪」
全然楽しくねー!他人事だと思って…このボケ…
眉間に皺を寄せて頬を引きつらせていると、野分がちょっと考えるようにカレンダーを見てから話を続けてきた。
「ヒロさん、俺4日の朝から時間空いてるんですけど一緒に動物園に行きませんか?」
「えっ?」
「夜勤があるので夜には病院に戻らないといけないんですけど、折角の連休ですしヒロさんとデートしたいです。」
「で…デートって///」
「書店巡りと読書だけじゃ思い出の俳句書けないでしょ?」
「それは…そうだけど。何で動物園なんだよ。」
ゴールデンウィークの動物園なんて普通は家族で行くもんなんじゃねーのか?
「ヒロさん、パンダ見たくありませんか?それに、みどりの日は入園料が無料なんですよ♪」
そう来るか…
「まあ…お前が行きたいなら、行ってやってもいいけど…」
「やった!なに着ていこうかな〜」
「柄にもねーこと言ってんじゃねーよ!バカっ///」
本来なら断るべきなんだろうと思う。束の間の休みなんだから、ゆっくりと身体を休ませてやりたい。
人混みを連れまわすなんてこと、年上の俺がするわけにはいかない。
頭の中ではそう思っているのに、野分がデートに誘ってくれたのが嬉しくて…
野分は俺の隣に腰を下ろすと、とても嬉しそうな笑顔で俺を抱きよせた。
お前がそんな嬉しそうな顔するから…俺はまたお前に甘えてしまうんだ。