純情エゴイスト〜のわヒロ編3〜

□猫になったヒロさん
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「ただいまです。」

眠たくて今にも閉じそうな眼を摩りながら靴を脱いだ。

何とかヒロさんの出勤時間前に帰ってくることができたけど、あと数分でヒロさんは出かけてしまう。今日もまたすれ違いだ。

リビングに入るとカーテンが閉まったままで薄暗い。ぼんやりと室内を見回して首を傾げる。

ヒロさんは?もう出勤しちゃったのかな…でも、カーテン閉まってるし、朝食を摂った形跡もない…

まさか!!

ハッとして、ヒロさんの部屋のドアを開けると、ヒロさんはまだベッドでスヤスヤと眠っていた。

慌てて駆け寄ってヒロさんを起こす。

「ヒロさん!朝ですよ。起きてください。」

「ん〜…野分?おはよう…」

ヒロさんは半分目を閉じたままムクッと身体を起こした。

「おはようございます。」

「うん…おやすみ…」

そう言ったかと思ったら、ヒロさんはクルンと身体を丸めて布団を被ってしまった。

「ヒロさん!ダメです!もう起きてください。」

「まだ眠い…」

ヒロさんは布団をギュッと握りしめている。可愛い///

丸まったままスースーと寝息を立てているヒロさんは子猫みたいでとっても可愛い。ずっと見ていたいけど…

「ヒロさん、もう支度しないと遅刻しますよ!」

ここは心を鬼にして起こさないと。ガバッと布団を剥ぎ取るとヒロさんはグーの手で目を擦りながら

「遅刻…?俺、猫だから関係ねーし…」

寝言を言いながらまた眠ってしまった。ヒロさん…猫になった夢でも見てるのかなぁ…

「いい加減に起きてください!!鬼の上條が遅刻したら学生さんに示しがつきませんよ!」

「猫は学校に入れないんだと…」

もう!どんな夢みてるんですか〜

「ヒロさんが猫なら、俺とデートしたりキスしたり…あんなこともこんなことももうできないんですね。残念です…」

「ん?野分…そんなの嫌だ…」

「じゃあ、もとに戻ってください。」

「ん〜…キスしてくれたら戻れるかも…」

ヒロさん…俺が必死に理性と戦っているのにそんな誘惑しないでください。

しょうがないなぁ…

チュッ///

唇に軽くキスをすると、ヒロさんの目がパチッと開いた。

俺と目が合うとビックリしたように目を見開いて、ガバッと起き上がった。

「野分!?お前、何してんだ///」

ヒロさんは手のひらで口元を押さえて真っ赤な顔をしている。

「よかった。やっと目が覚めたみたいですね。大急ぎで支度しないと遅刻しちゃいますよ♪」

「へっ!?今…何時…?…!!」

時計を見てヒロさんはベッドから跳ねるように立ち上がった。

「ヤベー!!遅刻する!」

俺が見ているのを気にする余裕も無いらしく、ヒロさんはパジャマをサッと脱ぎ棄ててYシャツに袖を通し始めた。

折角のチャンスなのでベッドに腰掛けてヒロさんの着替えを見学することにした。

シャツから覗く色白のスラッとした足…綺麗だな…あっ、もうスラックス履いちゃうんだ…残念。

ヒロさんは数秒で着替えを済ますと、冷蔵庫に入っていたゼリー飲料を掴み取って、バッグを片手に玄関の方に走って行ってしまった。

速っ…

俺も急いで見送りをしに玄関に向かう。

「忘れ物ありませんか?」

「ねーよ!お前、いつ帰って来たんだ?」

「10分前くらいです。」

「そうか…朝からバタバタしちまってごめん。お疲れ様。ゆっくり休めよ!」

「はい。ヒロさんはお仕事頑張ってください。」

「うん、行ってくる。」

「行ってらっしゃい。」

ヒロさんは小走りでエレベータに向かって行ってしまった。

なんだか慌ただしい朝だったけど、可愛いヒロさんを見れたし、着替えも拝めたし、何よりもヒロさんが労いの言葉をかけてくれたのが嬉しくて…今日はいい夢が見られそうだ。

ヒロさんの姿が見えなくなると、自室に戻ってバタンとベッドに倒れ込んだ。

もう限界…おやすみなさい…
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