純情エゴイスト〜のわヒロ編3〜

□四月は君の嘘?
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プレイルームで小さな子供達の相手をしていたら、入口の方でバタン!と何かが倒れるような音がした。

ビックリして音がした方をみると、盲腸炎で入院中のかなちゃんが倒れている。

「かなちゃん!大丈夫ですか?」

急いで駆け寄って声をかけると、かなちゃんは頬を赤らめて

「転んじゃった///」

と言って膝をはたいた。

5年生にもなって何もないところで転んだのが恥ずかしかったようで俺から目を反らしている。

病気じゃなくて良かった〜とほっとしたのも束の間、かなちゃんは痛そうに膝を摩り始めた。

「痛むんですか?」

「痛いよ〜。草間先生、病室までおんぶして!」

「わかりました。病室に戻ったら手当てしましょうね。」

そう言ってかなちゃんに背中を向けてしゃがむと、かなちゃんは嬉しそうに飛び付いてきた。

立ち上がると、かなちゃんが声を上げた。

「わ〜!!高〜い!最高♪」

なんだかずいぶん元気そうだ。

「動くと危ないですよ。ちゃんと掴まっていてくださいね。」

声をかけて、病室まで連れて行く。ベッドの上にかなちゃんを下ろすと満足げにニコニコしている。

おんぶされたのがそんなに嬉しかったのかなぁ?

「じゃあ、手当てしますから膝を見せてください。」

「もう治っちゃったみたい。」

「えっ!?」

「全然痛くないから大丈夫だよ。」

「そう…なんですか?」

「うん!ほら♪」

かなちゃんはパジャマの裾を捲って膝を見せてくれた。本当だ…何ともなってない。

「大したことなくて良かったです。」

かなちゃんの頭を撫ぜて病室を出ると、津森先輩に声をかけられた。

「野分、ロビーに上條さん来てるぞー。」

「えっ?ヒロさんが?こんな時間にどうしたんだろう…」

嬉しい半面、不安が過る。平日の昼間にヒロさんが病院に来るなんて…何かあったのだろうか?

「すみません!ちょっと行ってきます!」

急いでロビーに向かう。矢印ボタンを押して、なかなか来ないエレベーターにイライラしていると…

ピコン♪

可愛らしい音と同時に、頭を軽く殴られた。

「へっ…」

後ろを向くとおもちゃのハンマーを手にした津森先輩が笑っている。先輩…?

「バーカ!嘘だよ。嘘!」

「何が…ですか?」

「上條さんが来てるって言ったこと。こんな時間に来るわけねーだろ?」

先輩はしれっとした顔でそんなことを言っている。

「先輩…酷いです〜。何の恨みがあってそんな嘘つくんですかー。」

ヒロさんが無事とわかってホッとすると同時に、ヒロさんに会えないとわかってガッカリした気分になった。

人の心を弄んで笑うなんて、人間としてどうかと思う。

「悪い悪い!今日はエイプリルフールだろ?一人くらい騙してみようと思ったんだよ。」

「一人くらい…その一人が俺なんですね…」

いくらエイプリルフールでも、ヒロさん絡みの嘘はキツイです。

「だってお前、子供にまで騙されてただろ?」

「へっ?何のことですか?」

「かなちゃんだよ。あの子、野分におんぶして欲しくてワザと転んだ振りしてただろ?」

「あれってワザとだったんですか!?」

全然わからなかった…

「お前が小さい子たちを肩車したりおんぶしたりしてるのをいつも羨ましそうに見ててさ、だけど高学年だから恥ずかしくて自分もやって欲しいって言えなかったんだよ。んで、今日はエイプリルフールだろ?」

「なるほど…そうだったんですか。」

「お前、騙されやすいから気をつけた方がいいぞ〜!やーい!やーい!四月バカ♪」

そんなことを言いながら先輩はハンマーでピコピコと俺の頭を叩いた。

ヒロさんバカはいいけれど、四月バカは兼任したくないです…
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