純情エゴイスト〜のわヒロ編2〜

□夏の夜の錯誤
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Side 野分

カーテンの隙間から差し込む眩しい陽光が、細長い光のラインとなってベッドまで伸びる。

「眩しい…」

枕元が明るくなって目を覚ました。まだ6時なのに夏の日差しは容赦なく降り注ぐ。今日も暑くなりそうだ。

暫しぼんやりとした後、隣で寝ていたはずのヒロさんがいないことに気付いて、ベッドからガバッと起きあがった。

あぁ…またやってしまった。

急いでリビングに行くと案の定、ヒロさんはソファの上でスヤスヤと眠っている。

またヒロさんをリビングで寝させてしまった。

ヒロさん、ごめんなさい。

そっとヒロさんに手を伸ばして背中を揺する。

「ヒロさん、起きてください。朝ですよ。」

「ん…のわ…おはよう。」

おはようと言いつつもまた眠りに落ちて行くヒロさん。

ヒロさんは寝起きが悪くて、たとえ返事があっても、起き上がって着替えだしたとしても…油断はできない。

起きたと思って安心していると、二度寝、三度寝をしてしまって結局遅刻ギリギリの時間まで眠っていたりする。

同棲を初めて間もない頃はそれが原因で何度もヒロさんに怒られたっけ…

ヒロさんの寝顔も、寝ぼけてぼーっとしている顔も大好きだけど、平日の朝はちゃんと起こしてあげないと、ヒロさんは朝食を食べずに仕事に行くことになってしまう。

朝食を作ったらまた起こさないと…風邪をひかないようにタオルケットをかけてあげるとヒロさんは気持ちよさそうにタオルケットを身体にくるりと巻きつけてまた深い眠りに落ちて行った。



オムレツを焼きながら、昨夜のことを反省する。

病院から帰宅したのは深夜1時過ぎだった。

帰宅の日時が前もってわかっている日にはヒロさんが俺の部屋のエアコンも付けておいてくれるのだけれど、不規則な時刻に帰宅することの方が多くて俺の部屋には熱が籠っている。

熱帯夜に帰宅してエアコンが効くまで寝苦しい部屋で過ごすのは辛いだろうと、ヒロさんは自分の部屋に来ていいと言ってくれた。

ヒロさんの好意に甘えて、部屋が暑い時にはヒロさんのベッドに潜り込むことにしたのだけれど…

俺は元々平熱が高い。おまけにシャワーを浴びた直後の火照った身体でベッドに入って、仕事の疲れでそのまま寝落ちしてしまう。

昨夜もそのパターンだ。

深い眠りに就いている時に、いきなりそんなのがくっついてきたら暑苦しくて目が覚めるに決まっている。

俺の熱と重みに耐えかねて、ヒロさんがリビングに避難することになったのは今日が初めてではない。

このところ、帰って来る度にヒロさんをベッドから追い出しているような気がする…

ふわふわに焼き上がったオムレツに愛情を込めてケチャップで大きくハートマークを描いた。

トーストを焼いて、コーヒーをマグカップに注ぐ。

朝食の準備ができたので、再びヒロさんを起こしにかかった。

「ヒロさん、起きてください。もう朝ですよ!」

「うん…おやすみ…」

「寝ちゃダメです。起きないとご飯食べる時間が無くなっちゃいますよ。」

「ご飯?…食べる…」

ヒロさんは身体を起こしたけど、座ったまままだうとうとしている。

しょうがないな〜

「ヒロさん、おはようございます。」(チュッ)

おはようのキスをすると、ヒロさんはビックリしたように目をパチパチした。

「朝っぱらから何すんだ!」

「やっと起きましたね。朝ご飯作ったので食べてください。」

「ああ、顔洗ってくる…」



ヒロさんが戻ってきたので一緒に朝食を食べることにした。

挨拶をしてすぐに、昨夜のことを切りだした。

「ヒロさん、今朝はすみませんでした。俺、またヒロさんを起こしちゃいましたね。」

「ああ…そんなの一々気にするなよ。お前、疲れてたんだし、仕方ねーだろ。」

ヒロさんはトーストをムシャムシャ食べながら、なんてことなさそうな様子で応えた。

「やっぱり、今度からは暑くても自分の部屋で寝ます。リビングで寝てヒロさんが風邪をひいたりしたらと思うと、心配です。」

「野分!俺がいいって言ってんだからいいんだよ。夏で暑いんだし、リビングで寝たって風邪なんかひかねーよ!」

「でも…」

「でももだってもなし!年下のくせに口応えすんな。」

そんなことを言いながら、ヒロさんはケチャップのハートを崩さないように丁寧にオムレツを口に運んだ。

「うまい!やっぱお前が作る飯は最高だな。」

美味しそうに食べてくれるヒロさんを見ていたら、罪悪感も薄れてきた。ヒロさんは優しい…
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