純情エゴイスト〜のわヒロ編2〜
□野分のいる休日
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「ヒロさん、5月4日って空いてますか?」
「空いてるけど何かあるのか?」
「その日、一日休みになったんです。」
「ふ〜ん…って、休み!?」
思わず読んでいた本を投げ出して、ソファーから跳ね起きた。
野分にとってゴールデンウィークは普段以上に多忙な時期だ。病院ではこどもの日のイベントがあるし、草間園にも顔を出しているようだし、母の日も近いから花屋のバイトも書き入れ時のはずだ。
だから、今年も休みは無いものだと思って全く期待していなかったのだが…
「午前中にこどもの日のお祝いで草間園にお菓子を持って行こうと思ってるんですけど、その後は暇なのでどこかでかけませんか?」
「別にいいけど…連休中だからどこも混んでるぞ。それに4日はみどりの日で無料になる施設も多いからな…」
動物園にパンダを見に行きたいところだが、ファミリーやカップルで激混みの動物園に男二人で入る勇気はない。
「そうですね…じゃあ、家で普段できないことをしましょう♪」
「普段できないことって、例えば?」
「裸エプロンで柏餅を作るとか…」
「俺は着ねーからな!」
「大人向けDVDを借りて来て同じプレイをしてみるとか…」
「却下!」
「ヒロさんを肩車して走りまわるとか…」
「楽しいのか?それ?」
コイツに聞くんじゃなかった。前々から変わったヤツだと思ってはいたが、付き合いきれない。
呆れ顔で野分を見ると、野分は照れ臭そうに微笑んだ。
「ごめんなさい。ヒロさんと休日が被るの久しぶりだからつい興奮してしまって。ヒロさんは何かしたいことありませんか?」
したいことか…
いつも、野分がいない時は何してたっけ?本読んで、気晴らしに散歩に行って…そうだ!
「公園に菖蒲の花が咲いてるんだけど一緒に見に行くか?ついでに、菖蒲の葉も買って菖蒲湯に入りたい。」
「いいですね。菖蒲湯って確かこどもの日に入るんですよね?」
「ああ、一日早いけど、お前、毎年家にいなくて菖蒲湯入ってねーだろ?」
「はい。菖蒲湯なんて中学校以来かもしれません。楽しみです!」
野分は嬉しそうな顔をして、俺を包み込むようにギュッと抱きついてきた。
「ヒロさん、いつも寂しい思いをさせてしまってごめんなさい。」
「そんなこと、一々気にするなって言ってんだろ。もう慣れたし…」
「今度の休みにはいっぱいイチャイチャしましょうね。」
休日を一人で過ごすのには慣れたけれど、イチャイチャするのには未だに慣れない。今だって、野分に抱き締められて心臓がバクバクいってるのに///
「ヒロさん、顔赤いですよ?」
「煩い!お前、重いんだよ。いい加減離れろ!」
「え〜…もっとこうしていたいです。ダメ…ですか?」
まただ…その顔は反則だろ///
そんな風に大きな黒目でじーっと見つめられたらダメだなんて言えるわけがない。
「重いからお前が下になるなら…いいけど…」
「はい!」
ソファーに座った野分の膝に座ると、野分はまた俺を包むように後ろから手を回した。俺はそのまま本を広げる…三十路の男が何してんだか…
でも、野分椅子はとても座り心地がよくて…いつまでもこうしていたくて本を読むスピードを少しだけ緩めた。