純情エゴイスト〜のわヒロ編2〜
□パラレルウエディング
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Side 弘樹
あれ?このエピソード…何かの本で読んだような…
えっと…ああ、あの本だ。これ読み終わったらもう一度読み返してみよう。
ソファーの上で仰向けになったまま読書に没頭する。
週末で大学は休みだが、野分は仕事だし、雨も降っている。こういう日はやっぱり読書に限るな…
最後のページを読み終えてパタンと本を閉じると同時にソファーから起き上がった。
文学作品や和歌にはよくあることなのだが、他作品から要素を借用したり、引用したりする手法が使われていることがあって、そういうのに出くわすと元の作品まで読みたくなってしまう。
今もちょうどそんな心境で、気になっている本を取りに自室に向かった。
目的の本は学生時代に買った本で、最近は目にしていない。確か引越しの時に天袋にしまったと思うんだけど…
椅子をクローゼットの前に運んでその上に乗ると、天袋の中の段ボール箱に手をかけた。
その時…
「アッ…やば…あーーーっ!!」
椅子がクルリと回転して、段ボールごと椅子から落下してしまった。
「痛ってー…ロック掛けるの忘れてたー」
幸い腰を打っただけでどこも怪我はないようだ。腰を摩りながら、周りに散らばった本を段ボール箱に入れていると、読もうと思っていた本を見つけた。
それに、他の本も学生時代にハマっていた懐かしい作品が多くて読み返したくなってしまった。
時間もあるし、箱ごと持ってくか。
椅子から落ちたのは災難だったが、読みたい本が沢山出てきた。ウキウキしながらリビングに箱を運ぶとソファーの下にドサッと置いた。
「よーし!読むぞ!」
今日5冊目の本を手に取った時、ふとローテーブルの上に置かれたコーヒーに気付いた。
「あれ?俺、コーヒー淹れたっけ?」
まったく記憶にないが、俺は仕事中や読書中に無意識のうちに会話をしたり行動したりしていることが度々あるようだ。
マグカップを手に取って、冷めたコーヒーを啜った。
甘っ…砂糖が入ってる。俺、疲れてるのかなぁ…身体が甘い物を欲しているのかもしれない。
一気にコーヒーを飲みほして、再びソファーに横になった。
段ボール箱に手を入れて、くじ引きでもするように10冊目の本を引き抜いた。
今度は何の本だろう?何気なくタイトルを見てビックリした。
これ…学生時代に凄く読みたかったけど、どこを探しても見つからなくて、手に入らなかった本だ!
どうしてこんなところに?
急いでページを捲ってみる…やっぱり、読んだことない…
買った覚えもしまった覚えもないけど、とりあえず読むか…本を開くとそこには未知の世界が広がっていて、すぐに夢中になって本の世界に没頭していった。