☆彡夏のエゴイスト

□夏祭り
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本が入った紙袋を両手に提げて、夕暮れ時の道を歩いていると何処からか祭り囃子が聞こえてきた。

夏祭りでもしているのだろうか?そう言えば、マンションの掲示板に祭りのポスターが貼ってあったっけ…

賑やかな笛や太鼓の音を聞いていると、なんとなくウキウキした気分になる。

行ってみたいけど、一人で行ってもつまんねーし…

こんな時、野分がいれば誘ってみるのだが、ここ暫く連勤で、今夜も帰れるかどうかわからないと言っていた。

かと言って、秋彦や他の友人を誘う気にもなれない。

帰って本読もう…

紙袋の紐をギュッと握り締めて、歩みを速めた。



部屋に帰ると、リビングに直行して早速今日の戦利品を広げた。

休日で時間があったから、少し遠くの古本屋まで足を延ばしてみたら思いがけない掘り出し物が見つかった。

昭和初期に発行された文芸雑誌や、パンダシリーズの初版本は希少でなかなか手に入らない。

他にも前から欲しかった本や、読んだことのない本もあって、時が経つのも忘れて夢中になってしまった。

ちょっと買いすぎた気がしないでもないが…でも、今買わなかったらもう手に入らないかもしれない本ばかりだったし。

置き場所は後で考えるとして…

ソファーに仰向けに寝そべって一番上に置いてあった本を手に取った。ページを開くと古い紙とインクの香りが広がる…

明日も休みだし、読みまくるぞ!

目次にさっと目を通して中表紙に手をかけた時、ブルブルブルッ…テーブルに置いた携帯が急に振動し始めた。

こんな時に誰だよ…

画面には野分からのメールを告げるメッセージが表示されている。慌ててメールを開いて確認した。

『お祭りに参加しているので時間があったら来てください。』

「はあ!?」

思わず画面の文字を二度見した。

アイツいつの間に帰って来たんだ?俺が本屋に行ってる間に帰宅して祭りに行ったとか?一人で?

次々と疑問ばかりが湧いてくる。

すっかり読書モードに入っていたところだったから、いきなり祭りに来てくれと言われても混乱してしまう。

もしかして、これってデートの誘いなのか?浴衣とか着て行った方がいいのだろうか?

グルグルしながも本を置いて、出かける準備を始めた。

折角だから浴衣で行くか。野分も喜びそうだし…
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