☆彡夏のエゴイスト
□雨降って地固まる
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Side 野分
自転車置き場から部屋を見上げると、まだリビングの灯りが点いていた。
もう1時を回っているのに、ヒロさんまだ起きてるのかなぁ…
ヒロさんは時々、本を読んでいる途中で眠ってしまうことがあるから、少し心配になる。
暖かくなってきたとはいえ、ちゃんとベッドで寝ないと風邪をひいてしまうかもしれない。
自転車を置いて、急いで部屋に向かった。
玄関の鍵を開けようとしたら、空回りした。開いてる…
鍵のかけ忘れには注意するようにいつも言ってるのに、困った人だなぁ。
「ただいまです。」
靴を脱いで、まっすぐにリビングに向かう。扉を開けると、ヒロさんがソファーに横になっていた。
床には書店の紙袋と本が転がっている。買ってきた本が早く読みたくて、疲れているのに夢中になって読んでいるうちに寝落ちしてしまったのだろう…
それはわかるけれど…せめて服を着てから読み始めてください!
風呂上りのバスタオル一枚の姿で気持ちよさそうに眠っているヒロさんを見て、深い溜息をついた。
鍵もかけずに、こんな無防備な姿でいるなんて危険すぎる。何度も注意してるのに、全然聞いてくれないんだから。
「ヒロさん、起きてください。着替えてベッドで寝ましょう。風邪ひきますよ!」
肩を揺すりながら声をかけていると、
「うっ!!痛ったーーー」
股間にヒロさんの足が飛んできて思いっきり蹴られてしまった。ヒロさん…酷いです。
痛みをこらえながらヒロさんの方を見ると、スースーと寝息を立てながら幸せそうに眠っている。
ヒロさん…俺、普段あまりこんなこと思わないんだけど…こういうのはヒロさんの台詞だって分かってるけど…
「ムカつきました!!」
救急箱と氷水の入った洗面器を持ってくると、三角布でヒロさんの手を後ろで縛った。
それから、包帯で目隠しをして、声が出せないように口も三角布で縛りあげる。ヒロさんは息苦しそうにちょっと顔をしかめたけれどまだ眠っている。
荒療治だとは思うけれど、ちょっとくらい怖い思いをさせないとヒロさんの危機管理能力は高まりそうにないから。
行きます!
氷水に手を浸して、冷たくなった手でヒロさんの頬を撫でた。