☆彡秋のエゴイスト2
□想い想われすれ違い?
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食事の後、ソファーで寛いでいるヒロさんにプレゼントを渡した。
「懐中時計…お前にしてはセンスいいじゃん。」
ヒロさんは腕時計をしていなくていつもスマホで時刻を確認している。
直接肌につけるのは苦手なのだと前に話してくれた。だけど、懐中時計なら鞄に付けたりポケットに入れたりできるから使ってもらえそうだと思った。
俺は独占欲が強いから、プレゼントした物をヒロさんに肌身離さず持っていて欲しい…なんて考えてしまうんだ。
アンティークには手がでないけれど、時計屋さんを見て回ったらヒロさんの手にフィットしそうなサイズのシルバーの時計を発見した。蓋には星の王子様をイメージした彫刻が施されている。
本好きのヒロさんに似合いそうだと思って即決で買ってしまった。予算はオーバーしちゃったけど良い買い物ができたと思う。
ヒロさんは物珍しそうに箱から時計を出して眺めている。
「綺麗だな…文字盤も見やすいし…って、何だこれは!?」
時計の蓋の裏に写真が入れられるようになっていたから、ヒロさんとのツーショット写真を入れておいた。
「ヒロさんのご実家に行ったときにお母様に撮っていただいた写真です。」
「いつの間に貰ったんだよ!?」
「やっぱりカメラで撮るとスマホより画質がいいですよね。しかも写真屋さんでプリントしてくれたみたいです。」
ヒロさんの質問スルーして、笑顔で言葉を続けた。
俺はヒロさんが思っている以上にヒロさんのお母さんと仲良しなんですよ♪
「なんか…時間見るたびに恥ずかしいんだが///」
「すぐに慣れますよ。」
「こんなの見てるところを人に見られたらと思うと…絶対心臓に悪い。」
それって、蓋を開けるたびに時間よりも写真を見てくれるってことですよね。口に出したら殴られそうだから指摘しないでおこう。
ヒロさんの中に『写真を外す』という選択肢が無いことに嬉しくなる。
気に入ってくれたみたいで良かった。
「大事に持ち歩いてくださいね♪」
「お前、またくだらねーこと考えてるだろ。」
「アハハ…ただのマーキングです。」
頬をピクピクと引きつらせながらも、ヒロさんは嬉しそうに時計を見つめている。
「ありがとうな。」
いつまでも一緒に時を刻んでいきたいと…きっとヒロさんも同じ気持ちでいてくれる。
「ヒロさん…」
優しく抱き寄せて、キスを交わす。
「ベッドにいきますか?」
「ここでいい///」
「はい♪」
一晩中お祝いさせてください。
ヒロさん、生まれてきてくれてありがとうございます。
〜数週間後〜
「何見てるんですか?」
「時間を…って、野分!?いつからいたんだ?」
帰宅時間が被ったので、駅で待ち合わせをした。
ヒロさんが見ていたのは懐中時計…ではなくスマホだ。
「あの〜いつになったら時計を使っていただけるんでしょうか?」
駅でも病院でも、待ち合わせ時間を確認するヒロさんの手には以前と変わらずスマホが握られている。
「時計はちゃんと持ってる!」
ヒロさんは慌ててコートのポケットから時計を取り出して見せた。
家の鍵と一緒にいつも取り出しやすいところに入れて持ち歩いてくれているのは俺も知っている。
だけど、長いことスマホを使うのが習慣になっているから時計に切り替えるのはなかなか難しいらしい。
「すまん。つい癖で…」
そう言いながら時計の蓋を開いて…
「うっ…///」
一瞬でヒロさんの耳が真っ赤に染まり…速攻で蓋が閉まる。
「怒ってませんよ。ゆっくり慣れてくれれば大丈夫です。」
湯気の出ているヒロさんの頭を、笑顔でポンポンした。
いつまで経っても初々しい反応をしてしまうヒロさんが可愛くて…当分このままでもいいかな…なんて思ってしまうんだ。