☆彡秋のエゴイスト2
□恋敵は小学生?
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荷物を持って立ち上がろうとしたところを颯に止められた。
「ちょっと待って。勉強と関係ないことなんだけど、相談に乗って欲しいことがあるんだ。」
「なに?」
椅子に座りなおして颯と視線を合わせる。
「クラスに気になる子がいて…その子、勉強もスポーツもできて人気もあるのに、なんかいつもぼーっとしてるんだ。それで、何か決める時も周りに譲ってばかりで、自分より人のことばっか優先してて…放っておけないんだ。」
小学生時代の秋彦が脳裏に浮かぶ。あれは放っておけねーよな。
「俺が助けてやれることがあればいいんだけど、表向きは一人でなんでもできちゃうから俺が手伝ってあげられることとか思いつかなくて。先に選ばせようとしても最後でいいって言われちゃうし。」
「その子が誰かに頼りたいって思った時に傍にいてやればいいんじゃねーの?そっと見守って、いざって時は味方になってやれよ。」
俺は今でも秋彦の味方だ。アイツは滅多に弱みをみせないし頼ってくることも少ないけれど、少しでも支えになれればいいと思ってる。
「そうだね…あまり話しかけ過ぎてもまわりからからかわれて大変だし。」
「なんでからかわれるんだ?」
「だって女子とか誰が誰を好きとか噂話で持ち切りなんだぜ。女の子と仲良くしてるの見られたら何言われるかわかんねーじゃん!」
あ…相手の子って女子か〜そう…だよな。
「その子のこと好きなのか?」
「友達としては好きだよ。恋愛的な意味では弘樹が好き。」
「ん!?」
いまとんでもない発言が聞こえた気がするんだが…
「弘樹は野分と付き合ってるけど、俺のこと嫌いじゃないって言ったよね?」
「嫌いではないけど…」
「弟みたいなものなんでしょ?」
「ああ。」
良かった。俺の気持ちはちゃんとわかってくれているようだ。
「俺、早く大きくなって弟だなんて思えなくなるくらいイケメンになるから。そうしたら、俺も入れて。」
「入れてって…どこに?」
「野分とは結婚してるわけじゃないから不倫にはならないんでしょ?三人で暮らそうよ!俺、野分よりも好きになってもらえる自信あるんだ♪」
「なっ///待て待て!三人とか無理!絶対無理だから!!」
手をブンブン振りながら後ずさる。なんちゅうことを思いつくんだ〜!
「早い者勝ちなんて嫌だ。俺だってチャンスは欲しい。ダメ…なの?」
うわ〜っ…捨てられた子犬攻撃。この顔に弱いんだよな…
『あと10年してまだ俺のことが好きだったら…』とか先延ばしにする手もあるけど、コイツの場合はずっと俺のこと追いかけてきそうだ。ならば、早いうちにキッパリ断るのが優しさだよな。
「ごめん。俺は野分と二人がいい。自分でもよくわかんねーんだけど、野分じゃないとダメなんだ。俺は複数のヤツと同時に付き合うとか器用なことはできないし、なにより野分を傷つけたくない。野分一人を一生愛するって決めたんだ。」
「だってさ。」
えっ…?
「ヒロさん///」
「野分!?テメッ、どこから湧いて出た!?」
突然現れた野分がギュウギュウと抱き着いてきた。
「放せ!子供の前で恥ずかしいまねすんなっ///はやてー!!お前もグルか!?」
「ごめんね。野分に頼まれて断れなくてさ。俺も弘樹の気持ち知りたかったし。野分一筋だってわかってたけど、弘樹のこと好きなのは本当だから、ハッキリ言ってもらってスッキリした。」
「なっ///」
なんとか野分の腕を振り払って体勢を整える。
「ごめんなさい。ガキ臭いってわかってるんですけど、どうしても颯に嫉妬してしまって。ヒロさんの気持ちが聞けて嬉しかったです。大人げない態度を取ってしまってすみませんでした。」
「俺も不安にさせるようなこと言って悪かった。ごめん。」
「俺もヒロさん一人を一生愛します。」
「うん///」
ゆっくりと近づいてくる唇に目を閉じて応える。仲直りのキス…
「あのさー、ここ勉強部屋なんだけど。フラれたばかりのかわいそーな小学生の前でそういうことする?」
「あわわっ…ごめんなさいっ!!」
慌てて離れる野分。居たたまれなさ過ぎる〜///
逃げるように野分の手を取って外に飛び出した。
「もう!次からどんな顔して颯に会いにいけばいいんだ〜!」
「あの子のことなら大丈夫ですよ。俺よりしっかりしてますから。」
「お前、仕事は?」
「夕方からです♪このまま仲直りのデートしませんか?」
「そうだな。」
青い空にはうろこ雲が浮かんでいる。夕暮れ時もいいけれど、俺も颯と同感だ。