☆彡拍手のお礼ログ
□2015年度
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(2015年4月15日)
「ご訪問&拍手ありがとうございます。上條弘樹です。」
「お久しぶりでーす!津森です♪」
野分の仕事が長引いていて少し遅れると言うので病院にやってきたのだが…例のごとく津森に捕まってしまった。
「津森さん、仕事はいいんですか?」
「ご心配なく。上條さんのお相手をするのも仕事のうちなので気にしないでください。」
「俺は構っていただかなくて結構です!他の仕事してください!」
「え〜そんな冷たいこと言わないでくださいよー。俺、読者の皆さんにご挨拶するの4ヶ月ぶりなんですよ。」
「そうでしたっけ?」
「上條さんと野分が毎回イチャイチャしてるから出るに出られなくて。」
津森は俺の方をチラッと見て二ヤリと笑った。やっぱり、コイツ嫌いだ。
ムカムカする気持ちを押し殺していると、津森が更に続けてきた。
「今日だって野分の帰りを待ちきれなくて病院まで来ちゃったんでしょ?」
うっ…
「べ…別に待ち切れなかったわけじゃないです!家にいても暇だし、たまには野分と一緒に帰るのも悪くないかなーと思って///」
「上條さん、顔真っ赤ですよ。」
津森は楽しそうにクスクス笑っている。ムカつくー!!
「上條さん、俺と付き合ってもらえませんか?」
「いきなり何言い出すんですか?お断りします。」
「やっぱり…即決ですよね…」
津森はしゅんとなって、寂しそうに俯いてしまった。
いつものように俺をからかっているのかと思ったのに、そんな反応をされると俺が悪いことをしたような気分になってしまう。
「どうかしたんですか?いつもの津森さんらしくないですよ。」
津森は「はぁ〜」っと深く溜息をついた。
「俺、野分を患者さんに取られちゃったんです。」
「は!?」
意味がわからない。そもそも野分は津森のものじゃねーし…患者に取られたって…
「休憩時間はいつも野分と一緒に飯食ったり、上條さんの話したりして過ごしてたんです。だけど、この前外科に入院してきた患者さんが野分とすげー仲良くって、最近は時間が空くとすぐにその患者さんの所に行っちゃうんですよ。」
俺の話をしてるっていうのも気になるが…今重要なのはそこじゃない。野分と仲が良い患者って…
あ、津森のヤツそんなこと言ってまた俺をからかおうとしてるのかも。
「その患者って草間園の子供とかじゃないんですか?」
「違いますよー!立派な大人です。」
「じゃあ、大学でお世話になっていた教授とか…」
「違います。もっと昔からの付き合いみたいで、ただならぬ仲っぽいんです。」
ただならぬ仲って…嘘だろ?
「野分のこと『ちゃん』付けで呼んでるし…」
「年上の…女性…とか?」
「年上の男性です。野分、年上にモテるから。上條さんも覚悟しておいた方がいいですよ。」
「だ…大丈夫ですよ。俺は、野分を信じてるし…」
年上の男って何者なんだ?津森の様子からして嘘を言っているようには見えないし。
昔からの付き合いって言ってたけど、もしかして元彼とか…
そう言えば、付き合い始める前の野分のことはあまり知らない。野分は俺が初めてだって言っていたけど…違うのか?
状況がつかめず混乱していると、津森がガバッと抱きついてきた。
「津森さん!?何抱きついてるんですか?」
「上條さんが不安そうな顔するから…俺が慰めてあげます。野分なんか忘れて俺のものに…っつ…痛ってー…」
津森は頭を押さえながら俺から離れた。痛そうに頭を抱えている。
「ヒロさん!大丈夫ですか?」
「の…わき?」
「野分、お前、少しは手加減しろよ!仮にも俺はお前の上司なんだぞ!」
「ヒロさんに手を出す人は上司であろうと手加減しません!ヒロさんは俺のものです!!」
(ボカッ!!)
「痛った〜…ヒロさん、痛いです…」
「待合室で恥ずかしいこと言ってんじゃねーよ!」
「だって、先輩が…」
良かった、いつもの野分だ。津森の口車に乗せられてちょっとだけ不安になったけれど、コイツが俺以外の男に興味を持つなんてありえない。
「仕事、終わったのか?」
「はい!ヒロさん、一緒に帰りましょう♪」
「ああ…」
「先輩、お先に失礼します。」
エレベーターに乗ると野分と二人だけになった。一応、念のためにさっきのこと聞いてみようかな…
「野分…」
「なんですか?」
「お前、俺と出会う前に付き合ってたヤツとかいたのか?」
「いませんよ。ヒロさんに出会うまでは恋愛に興味なかったので。」
「そう…だよな…」
じゃあ、ただならぬ仲の患者って誰なんだ?
1階に着いたので、エレベーターを降りた。ロビーを歩いていると
「わっちゃん!」
大きな声で呼ばれて野分が振り向いた。
「おっ!ひったんも一緒か?久しぶりー」
ひったん…って、まさか…
「山さん、今日退院だったんですね。おめでとうございます。」
山さん…確か野分の友達の社長さんのうちの一人だ。野分と俺が出会うきっかけを作った人…
「入院されていたんですか?あの…病状は?」
「ああ、ただの盲腸炎。一週間入院していい息抜きになったよ。」
昔からの知り合いでただならぬ仲の患者って、山さんだったのか。
山さんと少し会話を交わした後、野分と一緒に病院を出た。
「ヒロさん、さっきの話なんですが…」
「さっきの話?」
「俺が前に付き合っていた人とか…何でいきなりそんなこと聞いたんですか?」
「それは、津森さんが…」
「先輩が?」
言えない…野分と山さんの関係を一瞬でも疑ってたなんて言えるわけがない!
「どーでもいいだろ!そんなこと…」
「どうでもよくありません!気になります!」
「お前しつこい!」
「ヒロさん!逃げないでください!」
野分に腕をしっかりと掴まれてしまった。
「津森さんが、お前とすごく親しくしてる患者がいて、昔からの付き合いだとか、だだならぬ仲だとか言ってくるから…」
「山さんを元彼と勘違いしたんですね。」
「ハッキリ言うなー///ボケカス!!」
野分は肩を震わせて笑いを堪えている。
「笑いたかったら笑えよ!」
「アハハ…ごめんなさい。でも、俺、ヒロさんがヤキモチ妬いてくれたかと思うとすごく嬉しいです。」
「野分///」
「先輩が不安にさせるようなこと言ってすみませんでした。もう不安にならないように、今夜は一晩中一緒にいましょうね♪」
やっぱりコイツ、バカだ…でも、そんな野分が俺は好きだから…
人に見られていないか気にしながら、差し出された手をキュッと握った。