純情エゴイスト〜のわヒロ編4〜

□魚心あれば水心
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「怒ってんじゃねーのかよ…」

半分ほど食べたところでヒロさんが呟いた。

「どうしてですか?ヒロさん、俺を怒らせるようなことしたんですか?」

「秋彦と飲みに行って、飲み過ぎて、潰れて…送ってもらった…らしい。」

「記憶にないんですね。」

「すまん。どうやって帰ってきたんだかまったく覚えてなくて…えっと…」

一生懸命昨夜の記憶を辿っているようだ。

「っつ…痛って…」

「大丈夫ですか!?やっぱり頭痛がするんじゃ?」

ヒロさんは痛そうに額を抑えている。

「無理に思い出そうとしなくていいです。宇佐見さんに送ってもらったなら大丈夫ですよ。」

ヒロさんが自分で服を脱いだのか、脱がされたのかが気になるところだけど…

そんなことでモヤモヤしているなんて子供っぽくて言えるわけがない。

ヒロさんなりに俺の気持ちを考えて反省してくれてるみたいだし、頑張ってご飯も作ってくれたし、それで十分だ。

「言いたいことがないわけじゃないですけど、今日はヒロさんの体調が悪そうなので小言はまた後日にします♪」

「やっぱ怒ってんじゃん…」

「アハハ…」

平気なフリをするのは難しい。

ヒロさん、ごめんなさい。例えヒロさんが100回『好きだ』と言ってくれたとしても、宇佐見さんへの対抗意識を消しさることなんてできそうにないです。

「お前と飯食べるの久しぶりだな。」

「そうですね。夏風邪と胃腸炎が流行っているので忙しくて。ヒロさんも気をつけてくださいね。」

「うん。」

「作り置きもうすぐなくなっちゃいますよね?後で作りますね。」

「作らんでいい。」

「ヒロさん?」

いつもなら『ああ、助かるよ』とか『サンキュ』って嬉しそうに言ってくれるのに…どうしたんだろう。

俺の作る料理に飽きちゃったのかなぁ…最近レシピ本を読む暇もなくてレパートリーが全然増えてないから…

「夜にはまた出かけちまうんだろ?」

「えっ…あ、はい。すみません。」

「謝んなって。作り置きはいいから、俺の相手しろ///」

「ヒロ…さん?」

「昨日酔い潰れたのは半分はお前の所為なんだからなっ///」

今の幻聴…だよね?やっぱり疲れが溜まってるのかなぁ…ヒロさんがそんなこと言ってくれるわけが…

「なに呆けた面してんだよ。」

足を小突かれて我に返った。

「痛っ!」

これって…

「すみません、夢かと思って。」

「人が恥ずかしい思いして言ったのに、このボケ!」

ヒロさんの方から誘ってくれるなんて…嬉し過ぎます!!

「じゃあ、これ食べ終わったら早速♪あっ、でも俺ここ数日お風呂入ってなくて汚いです…」

流石にシャワーくらいは浴びないと。ヒロさんに臭いと思われるのは嫌だ。

「俺も昨夜は入り損ねたから…だから…」

「どうしたんですか?」

「お湯張っといた。」

「それって…俺と一緒に入ってくれるってことですか?」

「言わせるなっ!バカっ///」

ヒロさんは真っ赤になって物凄いスピードで箸を動かし始めた。蜜柑だけ摘まんでパクパクと食べている。

ほんとヒロさんは照れ屋さんなんだから。

ご飯の支度だけじゃなくて、そっちのお膳立てまでしてくれるなんて…俺もヒロさんの期待に応えなくちゃ!

「わかりました!ヒロさんがその気なら遠慮なく♪トロットロのグッチャグチャにしてあげますね♪」

「なっ…///そういうこと言うな〜!!」



〜おまけ Side 秋彦〜

締切が近いというのにBL本のネタが浮かばない。弘樹からネタが聞きだせなかったのは痛いな。

昨夜は弘樹と飲みに行ったのに、彼とはすれ違ってばかりでネタもなにもないと言われてしまった。

美咲もバイトで疲れてもう眠ってしまったし…

どうしたものかと悩んでいるところに電話がかかってきた。弘樹からだ。

「もしもし、弘樹か?」

「秋彦?あれ…俺、野分と一緒にいたのに…」

また寝ぼけて電話してきたのか。意識が飛んでいるなら丁度いい。

「彼と会えたのか。良かったな。」

「うん!そうだ、ちょっと話聞いてくれよ。野分のヤツさ〜…」

急いでウサメモを開いてペンを取った。良かった。やっと筆が進みそうだ。
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