純情エゴイスト〜のわヒロ編2〜
□野分の趣味は?
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Side 野分
最近、ヒロさんの様子がおかしい。
俺が家にいる時間帯に頻繁にメールをくれるようになった。それはとっても嬉しいんだけど…
『今、何してる?』
履歴には同じような質問がずらっと並んでいる。
ヒロさん、もしかして俺が浮気してるとか変な誤解してるのかなぁ…俺はヒロさん一筋なのに…
携帯を眺めていると、着信音が鳴った。ヒロさんからだ。
『お疲れ。今何してる?仕事はもう終わったか?』
まただ。
『ヒロさんからのメールを読み返していました。仕事は明日の朝まで休みです。』
送信!っと。
料理や買い物をしているときやTVを見ているときなら、すぐに答えられるのだけれど、たまにこの質問に答えるのを躊躇ってしまうことがある。
それは、ヒロさんとイチャイチャしているシーンを妄想したり、ヒロさんに悪い虫が付かないように対策を考えたりしているときだ。
いくら俺でもそんなことヒロさんに言えるわけがない。
だから、そんなときは
『疲れてぼーっとしてました。』
とか
『コーヒーを飲んでます。』
とか当たり障りのない返事をして誤魔化している。
このまえ、ちょっと慌てていて
『息をしています』
と返したら怒られてしまった。
ヒロさんはどうして俺の行動を確かめたがるんだろう?好きな人に束縛されるのは大歓迎だけど、ヒロさんのことだから何か勘違いしているみたいで心配だ。
今夜、ヒロさんとちゃんと話してみよう。
TVを見ていると、お風呂から上がったヒロさんがリビングに入ってきた。
「何見てんだ?面白い?」
そう尋ねると、ヒロさんは俺のとなりにドカッと座った。
TVではバラエティー番組が流れているけれど、暇だったからつけてみただけでさほど興味は無い。
「暇だったのでなんとなく見ていただけです。ヒロさん、見たい番組あるなら替えていいですよ。」
「いや、そんなんじゃねーんだけど…」
「ヒロさん、俺に聞きたいことがあるならハッキリ言ってもらえませんか?」
「えっ!?な…なに?」
「この前からヒロさんの様子がおかしいから…心配です。」
真っすぐにヒロさんの目を見ながらそう言うと、ヒロさんは目を背けてしまった。
「別に…なんでもねーよ。」
「あの〜…一応念のために言っておきますが、俺、浮気とかしてませんから。」
「当たり前だろ!浮気なんかしようものならブッ殺す!!」
「じゃあ何で俺の行動を確認したがるんですか?」
「は!?」
「だって、ヒロさんからのメール…」
携帯を差し出して履歴を見せるとヒロさんの顔がみるみる赤く染まっていった。
「わ…悪い…そんなにメールしたつもりなかったんだけど…つい気になって…ウザかったよな?」
ヒロさん、俺にメールしてたの自覚無かったんだ…
「ヒロさんが俺のこと気にかけてくれて、仕事中なのに何度もメールしてくれて嬉しかったです。だけど、そんなこと今まで無かったからどうしたんだろう?って心配になってしまって。」
「ごめん。お前が一人の時に何をしてるのかが知りたかったんだ。そうすれば、わかると思って…」
「わかるって、何がですか?」
「えっと…気を悪くしないで欲しいんだけど…」
「はい、多分大丈夫です。」
「お前の趣味…」
「へっ!?」
「趣味だよ!お前の好きなこと知らないのに気付いて凄く気になったんだけど、そんなこと今更聞けないだろっ///」
なんだ…ヒロさん、そんなことで悩んでたんだ。
「すみません、俺、無趣味なんです。だけど、しいて言うなら趣味は『ヒロさん』です。」
「///」
俺の答えにヒロさんは真っ赤になって固まってしまった。
「俺、一人でいる時もヒロさんのことばかり考えてるんですよ。今頃は講義の時間かなーとか、ご飯何を作ったら喜んでもらえるかなーとか。」
「お前、バカじゃねーの?時間はもっと有効に使えよ…」
「俺にとってはとっても有意義な時間なんですよ。俺はヒロさんバカですから。」
にこっと笑って見せるとヒロさんも呆れたように苦笑した。