純情エゴイスト〜のわヒロ編〜

□ツンツンヒロさん♪
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ヒロさん、どうしちゃったんだろう?

掃除機をかけながら考える。一夜にして性格が変わってしまうなんてことあるのだろうか?

ヒロさんの部屋を掃除しようとドアを開けると、誰もいないはずなのに人の気配がする。

よく見ると、ベッドがガサゴソと動いている。

恐る恐る布団をめくってみると…身体を丸めてスヤスヤと眠っているヒロさんがいた。

…正確に言うとヒロさんではなくて、以前一度だけ会ったことのある小さいヒロさんだ。

「ヒロさん、起きてください。ヒロさん!」

ヒロさんの身体を揺すると、上半身だけ起き上がった。

しばらくぼーっとしていたけど、時計を見るなり飛び起きて慌てた様子で俺に向かって怒鳴りつけた。

「の〜わ〜き〜!テメー、何で起こさねーんだ!!」

「ヒロさん自分で起きて大学に行ったじゃないですか!」

「俺は起きてねー!!」

このヒロさん、もしかして…

「あなたは、ツン担当のツンツンヒロさんですか?」

「そうだけど…」

「置いて行かれちゃったんですか?」

「わりーかよ!」

ほっぺをプク―っと膨らまして、ご機嫌斜めだ。さっきのヒロさんも良かったけど、これはこれでかわいい♪

今朝のヒロさんの不可解な行動の訳がやっとわかった。ツンデレのツンが抜けてたんだ。

ヒロさんが病気じゃなくてよかった〜

ホッとしたのも束の間、ツンツンヒロさんが俺の服の裾をギュッと引っ張ってきた。

「どうしたんですか?」

「俺を大学まで連れてけ。」

「へ?」

「鬼の上條がデレデレしてたかおかしいだろ!それに、あいつ隙だらけだから宮城教授に襲われるかも…」

確かに!!あんな状態のヒロさんを大学に行かせるのは危険です!

「ヒロさん、早く行きましょう!」

小さいヒロさんを抱き抱えようとしたら、今度はバタバタと暴れ出した。

「俺は自分で歩ける!ガキみたいに抱えてんじゃねーよ!」

はいはい…そうですね。仕方なくヒロさんを下すと、スタスタと走りだした。

「ヒロさんはもう電車の中ですね…俺達は自転車で行きましょう。」

そう言って小さなヒロさんと一緒に自転車置き場に向かった。

「ヒロさん、俺、立ちこぎするんで、サドルに座ってください!」

「野分、自転車の二人乗りは禁止だ!」

「こんな時にお説教しないでください。ヒロさんは他の人には多分見えてないから大丈夫です。」

俺がそう言うと、仕方なさそうにサドルに乗ってくれた。

全速力で自転車をこぐと、ヒロさんはハンドルの内側をギュッと握った。

「怖いですか?スピード落としましょうか?」

「いいから、急げ!」

早くしないと、かわいいヒロさんを宮城教授や大勢の学生さんに見られてしまう。

必死で自転車をこいで、大学に向かった。



正門の近くまでくると、向こうからヒロさんが歩いてきた。よかった、間に合った。

「ヒロさ〜ん!」

手を振りながらヒロさんに近づくと、ヒロさんはキョトンとした様子で立ち止まっていた。

「野分、お前なんでこんなところにいるんだ?」

「ヒロさん、忘れ物です。ちょっと向こう向いてください。」

そう言って、ヒロさんに背中を向けさせると、ツンツンヒロさんはサドルからびょんと飛び降りてヒロさんの背中にダイブした。

「野分、ありがとな///」

照れくさそうにそう言うと、ツンツンヒロさんはすーっと消えていった。

朝から振りまわされちゃったけど、ツンツンなヒロさんもかわいかったなぁ。

ツンツンヒロさんに手を振っていたら、後ろを向いていたヒロさんが振り返った。

「おい!いきなり何すんだ!忘れ物ってなんだよ。」

「あ…えっと…忘れ物は…ツンデレのツンです。」

「はあ?」

呆れたように俺を見つめるヒロさん。良かったいつものヒロさんだ。

「すみません、俺ちょっと寝ぼけてたみたいです。」

「大丈夫か?午後からまた仕事なんだから今のうちにしっかり休んどけよ。」

「はい!ヒロさんもお仕事頑張ってくださいね。」

ヒロさんの顎に手をかけて、いってらっしゃいのキスをした。

その途端…

「こんなとこで、何しやがるんだ!このクソガキがー!!」

痛たた…鞄で思い切り殴られてしまった。

そうだ。ここ、正門の前でしたね。幸い、学生さんは通っていなかったけれど…

「上條、朝っぱらからイチャイチャしな〜い!」

宮城教授にはバッチリ見られてしまったようです。

ヒロさん、ごめんなさい。でも、もう忘れ物はしないでくださいね♪
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