純情エゴイスト〜のわヒロ編4〜
□野分の臨時休業日
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気がついたらベッドの上にいた。ここは…俺の部屋だ。
「野分、起きたのか?」
ヒロさんの声…
「起き上がるな!そのまま寝てろ!」
身体を起こそうとしたら怒鳴られてしまった。
「うっ…」
ヒロさんの声が頭に響いて思わずこめかみを押さえる。
「すまん、大きな声出して…頭痛むのか?」
心配そうに俺の顔を覗きこむヒロさん。
「大丈夫です。それより俺…」
病院にいたはずなのにいつの間に帰ってきたんだろう?
カーテンは開いていて窓からは日光が射し込んでいる。
今、何時?サイドテーブルの目覚まし時計を取ろうとしたら、ヒロさんに遮られてしまった。
「時間なんて気にしないで寝てろって。」
「でも…仕事に行かないと…」
「お前の先輩が『月曜まで来るな!』って。過労でぶっ倒れて車で運ばれたの覚えてないのか?」
ああ…俺、倒れたのか。全然記憶にないや…
「ご迷惑おかけしてすみません…」
「そういうことは職場で言え!」
「痛っ…」
「あっ!ごめん、また怒鳴っちまった。」
ヒロさんは申し訳なさそうに謝ると、俺の頭を優しく撫でてくれた。
「今日って金曜ですよね?ヒロさん仕事は?」
「有給取った。病人を放ったらかして仕事なんてできるわけねーだろ。」
「ごめんなさい…俺、もう大丈夫なんで…」
「野分!大丈夫じゃないから倒れたんだろ。3日間大人しく休んでろ。」
ちょっと疲れがたまっていただけだ。少し休めば大丈夫なのに、仕事を休ませてしまった。ヒロさんだって忙しいのに…
「言っておくが、俺は迷惑だなんて思ってねーから。いきなり過労死される方が余程迷惑だ。」
「あはは…そんな大袈裟な。」
「ヘラヘラ笑ってんじゃねーよ!このまま目覚めなかったらどうしようって…スゲー心配したんだからな!このボケ!!」(ゴツン!)
「うぐっ…」
「ゲッ!またやっちまった。すまん、大丈夫か?」
「大丈夫です。それより、ごめんなさい。ヒロさん寝てないですよね?」
今更ながらに気付いたけど、ヒロさん目が真っ赤だ。一晩中付いていてくれたのかな…
「謝らんでいいから、お前は何もするな。朝飯作ってくるからそれまで寝てろ。」
そう言って立ち上がると、ヒロさんは部屋から出ていってしまった。
ぼんやりと壁の時計を見上げると9時半を回っていた。
自分の健康管理もできないなんて医者として最低だ。先輩や職場のみんなに迷惑をかけて、ヒロさんにまで心配かけてしまった。
俺は他の人に比べて丈夫だし、体力もあるからと自負していたけど、それは過信だったようだ。
津森先輩に何度も『帰って休んでこい』って言われていたのに、病院に残ってシフト外の勤務をして…それで倒れるなんて…
凄く恥ずかしいし、情けない。きっと先輩も飽きれてるよね。
今度からは周りの忠告はちゃんと聞くようにしよう。
反省しているところに、ヒロさんが戻ってきた。ドアをちょっとだけ開けて何か言いたそうにしている。
「ヒロさん?どうしたんですか?」
「炊飯ジャーセットしとくの忘れてた。コンビニにご飯買いに行くんだけど、お粥の方がいいか?」
「プッ…ヒロさん可愛い///」
「笑うなっ!」
俺が運ばれてきてバタバタしていたから忘れちゃったんですよね。
「普通のご飯がいいです。」
「わかった。行ってくる。」
可愛いヒロさんを見たら、ネガティブ気分もどこかに吹き飛んでしまった。
やっぱりヒロさんは凄い人です。