創作小説 ユメモリ

□1.ユメモリ新人リーダー
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「トキネ!」

母に呼ばれて、時音がリビングに入ると、母は新聞を広げて言った。

「最近本読んでないみたいじゃない」

母に言われて時音はギクリとした。慌てて、思わず持っていたブラシを落としかけた。母は新聞を読みながら笑った。

「ちゃんと寝てるのね。えらいえらい!」

「う、うん!なんだか最近眠くって」

「それだけ日中頑張ってるという証拠ね。えらい!」

「え、えらくなんてないよ……」

満足げに「えらい!」と繰り返す母から逃げるように、時音はリビングから出た。

時音の毎日のちょっとした楽しみ、それは読書だ。一日の終わりに布団にくるまって本を読む。ついつい夢中になって、母からは早く寝なさいと怒られることもしばしばだった。

しかし、時音は最近、本を読んでいない。あれほど我慢していたのに、むしろ、本を読まなければという義務感さえある。

時音は小さくあくびをして、呟いた。

「……やっぱり休んだ気がしないなぁ」

鞄に教科書を詰め込んで、制服に着替える。みなと中学校の制服だ。時音は今年、二年生になった。去年は堅苦しかったジャケットも、今では体に馴染んでいる。スカートも、少し短くなったかもしれない。いや、スカートは変わらない。時音の背が伸びたのだ。

少し疲れの残っている体を伸ばしながら、時音は思った。ぐっすり寝たい、と。
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