NARUTO
□きみが泣いている夢を見たから
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Side N
暗がりの中、誰かのすすり泣く声が聞こえた。
懐かしくて、温かいような……この声の主は―??
「きみがが泣いている夢を見たから」
暗がりの中、俺の居る場所だけが照らされていた。
ここが何処なのかも、どうやってここに来たのかも分からない。
辺りを見回していると、前方から微かに声が聞こえてくる。
目を向けると、もう一ヶ所明るく照らされた場所、そこには少年が立っていた。
((見たことねー服だし、里のヤツじゃないよな……))
知らないはずなのに、なぜか懐かしく感じた。目が離せなかった。
少年の銀色の髪が里で待っている、愛しい人に重なったからだろうか。
少年はこの場所が何処なのか知っているのだろうか、話を聞くために俺は少年に近付いて行った。
すると……
少年は、声も出さず、ただ静かに泣いていた。
俯きながら肩を震わせて。それを見た途端、こちらまで悲しい気持ちになってきた。
「なぁ、お前ってば何で泣いてんだ?。」
堪らなくなり声をかけてみたが、少年は俯いたまま答えなかった。
「どうしたんだよ!!誰かに怒られたか??怖い夢でも見たのか??」
とりあえず、何も答えない少年に向かって質問を投げかけるが、首を横に振られるばかり。
とはいっても、ナルト自身自分が昔泣いた場面を思い出しては尋ねていくことしかできなかった。
((何で泣いてんだってばよ……怒られた訳でもねーし、怖い夢も見てねーみたいだし……てか、これ自体夢なんじゃねーのか?じゃあ、その他には……))
そう考えながら首をひねらせていた時、ある答えにたどり着いた。
俺が1番悲しかった事。1番辛かった事といえば……
「お前さ、もしかして寂しいんじゃねーのか?」
そう聞くと、かすかに少年の方が揺れた。少し遅れて、力なく首を横に振った。
((もしかして……ビンゴ??))
もう少しで核心をつけそうだと直感し、ナルトはさらに質問を続けた。
「何で寂しいんだ?俺と一緒で、1人なのか……?」
また、数秒遅れてから少年は首を横に振った。
でも、その素振りだけで十分だった。少年の思いはしっかりと伝わっていた。
((きっとこいつは寂しいんだ。1人でこんな所に居て…))
ナルトはその場にしゃがみこんだ。
俯いていてはっきりとは分からないが、少年とほとんど同じ目線になった。
そのまま、少年をしっかり見ながらこう続けた。
「俺もずっと1人だった。ずっと寂しかった。でもな、今は大切な人も仲間も居る。帰る場所だってある。
今すぐって訳じゃねーけど……お前にもきっとできるから。だから何時までも泣くな!!信じて待ってろって!!!」
同じ経験をしてきた自分だから分かる。やり場のないこの気持ち、辛さ、虚しさ。
目の前の少年に言い聞かせるように、過去の自分を安心させてやれるように、優しく紡がれた言葉は少年の心に届いたのだろうか。
数秒の間があった後、少年の首が初めてたてに動いた。
嬉しくて、つい笑顔になる。自分の言葉が届いた、人を救えた、辛かった過去も無駄じゃなかった。
少年のお陰でそう思うことができた。
笑顔を向けていると、少年は服の袖で目元をごしごしと擦りはじめた。
「もう泣かねーな!!えらいえらい!!」
そう言いながら、頭を撫でようと少年に向かって手を伸ばす。その時……
「ありがとう……ナルト」
俯きながら発せられたその言葉は、確かになるとの名を呼んでいた。
「な……なんで俺の名前知ってんだってばよ……」
驚きを隠せないでいるナルトに追い討ちをかけるように、少年が伏せていた顔を上げた。
その顔は―……
「カカシ……せんせ……??」
里で帰りを待つ、愛しいあの人に似ていた―。
・・・*・・・*・・・*・・・*・・・*・・・*・・・*・・・*・・・*・・・*・・・*
朝になり、任務の終わった俺たちは里へ帰還する事となった。
あんな夢を見たから、早く里に帰りたかった。夢の少年が抱えていた想いは"過去"なのか
"今"なのか、気が気でしょうがなかったからだ。
任務で里から出ていないだろうか。帰ったら、報告書なんか後回しにしてすぐ家に行ってみようか。
玄関が開いたら、思い切り抱きしめて、「ただいま」って言ってやる。
もうすぐだから、待っててくれよな……カカシ先生―
-END-
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