イナイレシリーズ
□結局の所天邪鬼*
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「なぁ,神童。アイツもう駄目なんじゃないのか。」
「あ,霧野だろ。あんなの期待するだけ無駄だって。」
「・・・・そう・・・かもしれないな。」
「結局の所天邪鬼」
何・・・今の会話・・・。
部活終わり,部室に戻ってくる途中にたまたま聞こえたその話は,俺の心をかき乱した。
俺ってやっぱみんなの役に立ててなかったんだ・・・。それ以前に,神童にも必要とされなくなってたなんてな。
できればこの事実は知りたくなかった。面と向かって言われるのより辛い。
俺は,これ以上神童たちの話を聞きたくなくてその場から走って逃げていった。
次の日,当たり前のように練習があった。でも,昨日の事もあって全く練習に身が入らなかった。
結ヌ朝練も満足にできないまま時間だけがすぎていった。
「霧野。ちょっと良いか。」
練習終わり,声をかけてきたのは神童だった。
「今日の練習,全然集中してなかったけど何かあったのか?」
さすが昔から付き合ってるだけあって,俺の異変にすぐ気付いてくれた。
その原因が自分にあるなんて,
こいつは知らないんだろうな・・・。
「別に。昨日あんま寝れてなかったから疲れが残ってたのかも。心配かけたなら謝るよ,ごめん。」
「そうか,なら良いんだ。あんまり無理はするなよ。」
そう言うと,部室棟の方へと歩いていった神童を見ながら,
今あいつに昨日の事を聞いたらちゃんと答えてくれるのかな・・・。
「なぁ,神童。」
気付いたら,呼び止めていた。
昨日の真実が知りたかった。
本当に,おまえに俺は必要なくなってしまったのか?
何時から・・・そう思うようになったんだ?
聞きたいことは山ほどあった。
でも,振り返ったアイツの顔を見たらそんなこと言えなくなった。
もし今聞いて,本当に必要ないって言われたら?
もう,俺にあの笑顔で話し掛けてくれなくなったら?
そう考え出したら,怖くてたまらなくなった。
「どうしたんだよ。霧野。」
「あ・・・何でもない。それより早く着替えに行こうぜ。授業が始まっちまう。」
俺は臆病者だから,真実を聞く事一つできないんだ。
それに,神童の笑顔が見れなくなるくらいなら,このまま何も知らない振りをしている方がいい。
結局午後の練習もまともにできないまま,夜を迎えていた。
昨日のことを考えると眠れなかった。1人の夜が不安でしょうがなかった。
今までなら,こんな時迷わず神童に連絡していたんだろうな・・・。
そんなことを考えていると,
不意に着信音が鳴った。
ケータイの画面に映し出されたのは「神童拓人」の文字。
「もしもし。どうしたんだよ。こんな時間に神童から電話なんて,珍しくないか?」
「寝ていたら悪いと思ったんだがどうしても気になることがあってな・・・。霧野やっぱり何かあったんじゃないか?今日,ずっと様子がおかしかった気がして・・・。」
ほら,やっぱりこいつは気付いてない。そういう態度をされる度にこっちは辛くなっトいくのに。
もう我慢できなかった。
要らないなら今ここではっきりそう言ってくれればいい。
「なぁ,神童。もう俺は,必要ないのか?」
「・・・どうしたんだ。そんなこといきなり言うなんて・・・。」
「もう期待できないんだろ。俺のこと。チームに居ても足手まといだもんな。」
「!!・・・霧野・・・お前聞いてたのか?!」
今,一瞬焦ったよな。
やっぱり,間違ってなかったんだ。
もう,俺は要らないんだ・・・。
「やっぱり・・・そうだったんだな。
そうやって,みんな俺を置いていくんだ・・・。俺,みんなに見捨てられても神童は・・・・神童だけは!!そばに居てくれるって・・・・信じてたのに・・・・・・。けど・・・そんな価値すらないんだよな・・・・。」
こんなこと言ったって,どうにもならない。ただ,ウザイやつって。そう思われて終わりじゃん。
でも,言葉は,涙は止まることを忘れたように,動き続けた。