銀土

□sweet magic
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「39.5度です」


怒っている山崎から淡々と告げられた事実に、自室の布団の中で深く溜め息をついた。


「……副長、今日1日“絶対安静”ですからね」


「……ああ…」


いつもは気弱な部下にここまでキツく言われたら、大人しくしておくしか術は無い。


見慣れきった木目の天井を、熱で潤んだ瞳に映しながら、愛しの銀色を脳裏に浮かべた。


「会いてェなァ……」


もう、2週間は会っていないだろうか?此方の都合がつかない所為で大分待たせてしまっている。


熱さえ出なければ。明日辺りにはあの赤紅の瞳を見つめに行けたのに。



誰もいなくなった自室は、季節もあいまって寒々しく感じてしまい仕方ない。



なのに、熱で体は熱いしだるいし。



「……クソッ!」


舌打ちくらいしか動かせるものが無い。


布団を被って寝てしまおうとした時。



「……十四郎……」


廊下と自室を隔てる襖がそぉっと開く気配と共に、心地いいテノールが鼓膜を揺らした。



「……銀?…ど、どうして……」


後ろ手に襖を閉めて、俺のそばにあぐらをかく。


「ジミーから十四郎が熱出したから、看てくれって……心配したぜ……」


頬を撫でられる感覚が気持ちよくて、ねだるように寄せる。


「……会いに……行けなくて…ごめん…」


ひりつく喉から、必死で言葉を紡ぎ出す。伝えたい、想ってるのはお前だけじゃねェって。


「……大丈夫。俺がいつだって会いに来てやるから」


柔らかく微笑む銀時を直視出来なくて、目を閉じれば。


チュッ。


瞼に温かくて甘い温度を感じた。


そろそろと瞼を持ち上げると、赤光を灯した瞳が見守るように細められる。



「……十四郎……早く、よくなれよ……」


弾力がある、少しかさついた唇が俺のそれに合わさり、更に深く求められた。



「…んっ!ふぅっ……」


銀糸を繋いで漸く離れると、口の中にころりと甘い塊。


「……のど飴。喉、痛てェだろーなぁって」


イタズラが成功したように無邪気に笑う銀時は本当に、かっこよくて。


風邪が移ることも頭の片隅に追いやられ、更に熱が上がったように感じながら、風邪を早く治してもっと甘えることを決意したのだった。


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風邪ネタは鉄板!


寒くて、動くのが億劫になりますね〜。

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