記念部屋
□年越しを二人で。
1ページ/4ページ
「副長、何処かヘ行かれるんですか?」
寒さで軋む板張りの廊下を、いつもより防寒した格好で歩く。
「あ?ああ……ちょっと、な」
すれ違いかけた隊士が不思議に思ったのも、無理はない。
非番に自分が出歩く事は余り無いので、(マヨが切れた時は別。)こんな時間から出ようとしているのが珍しいのだろう。
問われた土方は、出掛ける理由を考えたが下手に嘘を吐きたくなくて、誤魔化した。
が、しかし、タイミングが悪かった。
柱にもたれてサボりをきめていた総悟が、からかい混じりに、此方に歩いてきたのだ。
「バカだねィ。ちょっとは頭を使いな。この着流しは土方さんの一張羅。この羽織は旦那とのデートで旦那に買って貰ったモンだ」
何故、お前がデート内容を知っている?
土方が声を張り上げるよりも先に、隊士はああ、と 納得してしまう。
「万事屋の旦那ですね。あ、今からデートですか!引き留めてしまってすみません!」
慌てて頭を深々と下げてくる隊士に、何も言えないまま、総悟に背を押されてしまう。
「さ、さ。土方さん、時間に遅れますぜ」
何でこんなに色々とバレているのだろう。
そう思いながらも、柱の振り子時計が6時を示していたので渋々、外へ出た。