記念部屋

□雪の約束。
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「降ったなぁ…あー、帰りたくねェ」



「わかるな……」



銀八と土方は暖房で暖まった国語準備室で、手を繋ぎながら、窓の外を眺めていた。



4階の端に位置するこの部屋からは、グラウンドが見渡せるが、辺り一面がホワイトカラーに染まりきっているのだ。



時刻は午後6時半。生徒たちはこの悪天候のため、さっさと家に帰ってしまい、学校には残っていない。




「……でも、まぁ……綺麗だ…な」




グラウンドを囲む形で設置された大型ライトが眩しいくらいに辺りを照らしているため、夜空とのコントラストが素晴らしい。




「ん?十四郎も雪遊び、したくなった?」




「なっ!違げェ……」




からかう声に思わず横を向けば、予想よりも近くに精悍な顔があって。


ふにっ。




「と、と、十四郎!?」




自分からキスをしたくなって。頬に押し付けるだけの幼稚なそれをおくる。



「……好き……」



そう、か細く呟けば。



「……やっぱり、小悪魔だよ、十四郎…」



ぎゅうと抱き締められて、銀八の心音を聞き取る。



少しだけ背伸びして、鼻先を銀八の首筋に擦りつけた。



甘い匂いと煙草のフレーバー。



体内に取り込めば、切なく心臓が疼く。



「……十四郎、最近煙草を吸わなくなったね…」



ポンポンと、あやすようなリズムで背を叩かれながら、土方は思案してみる。



確かに。銀八と付き合いだしてからほとんど吸わなくなった。



煙草なんかより、もっと追いかけたい存在があるからなんていざ、口にだそうとすると、恥ずかしくなってしまって言えない。



苦しいくらいに愛している。


でも、この事実を抱えて、来年の3月には卒業せねばならない。


嫌だ。でも卒業しないと新たな道には進めない。


先生と同じ色の『白』を見てしまったからか。


心細くなってしまい、土方は知らず、白衣を纏う彼の背を掻き抱いた。


「十四郎?」


「もう少し……このまま……」


雪が発する色は美しいけど、嫌いだ。


全てを『無かったこと』にしてしまうから。

綺麗過ぎて嫌いだ。黒は混ざらない。

取り残されてしまう気がする。


「十四郎……」

「……わっ!」


いきなり抱き抱えられ、お姫様だっこの形になる。



「…銀八?」


紅緋の瞳が悲しげに歪められるから、不安になって片手を滑らかな頬に当ててみる。


擦り寄るように目を閉じるから、なんだか離せなくなる。


「……どこにも……どこにも行かないで……十四郎……」


本当に小さな小さな声で。



今にも溶けてしまいそうな……危うさを含みながら細く伝わる悲しい呟き。



突然のそれに戸惑いながらも、やっと気づく。



銀八も何処か寂しそうに雪を眺めていた事、同じ不安を消すために手を繋いでいた事……。


そうだ。銀八も怖いんだ。消えてしまう事に、温かさを失いたくないから。



「……早く……一緒に住みたい…」



ソファーに移動して、膝の上に乗せられたかと思うと大きな、それでいて滑らかで器用な指先が土方の涼しげな目元を撫でる。


紅玉は輝きを帯びて、真剣に訴えていた。


発せられた言葉に、先が見えた気がして、胸のつかえが溶けていく感覚を味わう。


「……当たり前……だ。銀八以外となんて……考えられない」


銀八も勇気を振り絞って告げてくれたから。

自分からも………プレゼントを。


「なぁ、土方?」


甘い声が耳を擽るから、笑って返事をしたら。


「今日、泊まってって?」


彼がそう言ったらそれはもう、魔法。


「いいぜ」



不安も不安。揺れる無常のこの世界で貴方に会えたこと忘れない。

だから、この手を繋いでいましょう。

離れないように……しっかりと、ね?

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3Z切な系。

銀八と土方は離れませんが。

ここまで読んで頂き、ありがとうございます♪

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