記念部屋

□貴方の体温
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夢を見た。


貴方がいなくなる夢を。



「あー、寒い。寒すぎて手元が狂いそうでさァ〜」

「絶対に狂わすな」


豪雪と呼ぶに相応しい量が屯所の屋根に降り積もった。


隊士総出で雪かきの任務をこなしてるのだが。


屋根でシャベル片手に全くやる気のない沖田は、手にしたそれを別の用途としての道を見出だそうとしていた。


同じように屋根に登っている土方も、コートに手袋と装備しながら白い息を吐きながら、それでも作業の手を止めようとしない。


既に降り止んではいるのだが、いかんせん、風が強くて耳が冷たい。


痛みとも取れるくらいに赤く色付いてしまっているが、早くこなして下へ降りる他に術は無く。



「早く終らせようぜ」


「土方さん一人でやって下せェよ」


ヒラリと軽い身のこなしで地面に着地した沖田は、怒鳴る上司を余所にヒラヒラと片手を降って消えた。



「チッ!」


見失ったが、元から追いかける気もなかった為、一人で作業を続ける。


かいても、かいても、終わらない。


腕に疲れを感じてしゃがみ込もうとした途端、足元の雪がズルリと崩れた。



「……わっ!」


早く受け身を取らねば!そう思っても、平衡感覚を失っている為にふらついた。



ガッ!………背から腰に掛けて力強い何かに支えられ、屋根に引き戻される。



それが、人の両腕と知るまでに時間は大して要さなかった。



「……銀」

「…よかったァァ…」


抱き締められる形で頭上から安堵の声が掛かる。


少し目線を上げれば、雲間から顔を出した太陽に輝く銀髪。

こんな綺麗な色を持つ人間は、土方の知る限りただ一人だけ。



助けたのは恋人の坂田銀時、その人だった。



「どうして…銀がここに?」



土方のあげた手編みの赤いマフラーを首にしっかり巻き付けて、両腕を流水模様の着流しの中に仕舞い込んでいる彼は鼻を赤くして、薄く笑う。



「雪かき、お前一人じゃ…大変だろ?手伝いにきたの」


冷えきっていた筈の体か、急速に温かさを取り戻す。
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