記念部屋
□旦那さん、大ピンチ!
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「………あ」
自分の声が酷く遠くに響いたなぁと、かぶき町の道端で土方は思った。
久々の非番。いつもの着流しをラフに纏い、この町に根を張っている恋人の元へと朝から向かう途中。
見ちゃいけない(土方にとってのみ。)ものを見てしまったと身を強ばらせた。
目の前には、恋人――銀時にやけに馴れ馴れしく肩を組むグラサンのオッサン。
「ねー、銀さんー、いいでしょー?行こーよ!」
「長谷川さん、酔いすぎだぜ?もう…やめにしたほうが…」
はたから見れば仲良さそうな、酒飲み仲間。
だが。土方の目にはそうは映らなかった。
「ぎ〜ん〜と〜き〜、俺というものがありながら!」
腰に提げた愛刀の柄を無意識に撫でながら、
「……殺す」
なんとも、物騒な台詞を吐いて彼らの後を追った。
――――――――
「……!?」
分かりやすい殺気。攘夷志士のそれではない。
もっと、日常的に向けられている馴れたそれ。
十四郎だ、と咄嗟に理解するやいなや、長谷川の腕を引き剥がし、
「長谷川さん!逃げろ!!」
「へ?何で?」
酒が程よく回り過ぎているからか、ぼーとしたまま、首を傾げる。
「良いから!遠くへ行け!傾げる首も無くなっちまうぞ!」
言い切った刹那。
「正解。銀時は俺のだ!離れろや!」
白い閃光と共に銀時と長谷川の間に、土方の愛刀が降り下ろされた。
「ヒィィィィッ!」
一瞬で酔いも覚めたか、四つん這いになって長谷川は逃げていった。
途端に訪れる静寂。朝とは言ってもまだ、明け方。人通りなぞ無いに等しいのだ。
「……で、銀。どうやって死にてェ?俺が喰ってやろうか。俺の体内で血肉になって二人、離れないようにしようか?」
語る土方の目は恐ろしい程、澄んでいる。
ただ、呑みに行っただけなのに……とかは言っちゃいけないお約束。
「……ごめんね、十四郎…」
柔らかく頬にキスを降らせると。
「………!」
すぐに真っ赤になる端整な顔。
「……次見たら……わかってんのか?」
もう何度目の台詞だろうか。そんな心配しなくとも何処へも行かないのに。
「…わかってる」
心の何処かでほんとは、十四郎に食べられてしまいたいと望んでいる自分に気づかないフリをして。
今日の二人きりの非番を楽しむ為に、銀時は土方を家へと上げた。
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狂愛。
ヤンデレ!大好き!特に銀時を独占しようとしてる十四郎がいい!
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