記念部屋
□心臓がもたない!
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土方十四郎は、朝から屯所の自室で柄にも無くドキドキと心臓を高鳴らしていた。
まだ、布団の中でもう一眠りできる時間は余裕であるのだが。
「……眠れねェ……」
布団にくるまったまま、ごろごろと畳を行ったり来たり。
こんな緊張感、捕り物の時だって感じない。
「……あー……」
呟いた声は木目の天井に虚しく吸い込まれていく。
……原因は……。
「…万事屋と……ゆ、遊園地……」
口にしただけで、みるみる内に土方の頬が赤く色づいていく。
「あー!俺は生娘か!あ!?違げェだろー!」
叫んでも顔の熱さはとれない。かなり重症だ。
万事屋こと坂田銀時と先日見事、恋人に昇格した土方は、銀時からの誘いで遊園地デートをする事となった。
近藤たちにはあの日、病室の前で聞き耳を立てられていて、
開けてみれば近藤は右の親指を立てながら涙を流していて、
沖田には舌打ちをされ、駆けつけた神楽と新八には「これから、よろしくお願いします」と挨拶までされた。
「付き合った途端…周りに…バレるとか……」
嫌じゃない。寧ろ皆が応援してくれていて嬉しかった。
銀時にも気持ちが伝わり、この間電話が掛かってきた時も耳元で響く声に頭があわあわと意味もなく大回転した。
「……ふぅ…」
まだ、待ち合わせまで時間はあるのだから、少し落ち着こう。
そう考え、土方は紫煙を燻らせるために、庭に繋がる障子を換気の為にそっと開けた。
「……やっぱり……」
月明かりの下、それと重ねて彼を思い出せば愛おしいと想う心を再確認する。
「…怪我…治ってんのかな…」
心配だが、それは今日確認すればいい訳だし。
緊張するが、会えることが何よりも楽しみだと知らず口角が上がっていた。