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□君から始まる昔話。
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会いたかったよ、と笑う君の顔を見て、昔を思い出した。










君から始まる昔話。












そういえばこのギターを始めたのも彼の真似だったんだと、
大阪行きの電車の中で
あの頃の私は思う。


絵を描いてみたり、
奇抜な格好をしてみたり(それはいつもお兄ちゃんに止められてしまったけど)、

いつもいつも私の趣味を広げるのは彼に近づきたい想いだった。



恐ろしいくらい趣味が合うのに、彼は不信感なんてまるで見せずに笑い話しかける。

私が君を追いかけてることなんてまるで気づかないみたいだ。







アイドルとしての仕事が忙しくなった兄と一緒に住んでいた東京はずんずん遠くなって、

細長くなったみたいな緑を通り過ぎて電車は走る。


「ねぇ、たぁ兄。」


隣に座る兄に声を掛けると、眠そうにん?と返される。

これから大阪で仕事らしい。
アイドルは忙しい。



「私、章ちゃんに告白する。」


「……しゃーなし。」


一言だけ言ってまた睡眠体制に入るたぁ兄に、
お前の許可求めてねぇよ、と軽くチョップをかました。











「なんや、今日はえらいぼーっとしてるなぁ。」

君の声に、はっと今に戻される。

「昔話が頭をぐるぐるしてるの。」













そう、そうだ。
思い出した。この白い壁。

白っぽい壁に目が回りそう。

休憩中の楽屋の前で、私の隣には彼がいて、私はといえば何も言えずにだまりこむばっかりで。



「東京から結構遠かったやろ。」

「うん…でもまぁ、眠たかったし。」

「それやったらいい睡眠時間やんな、」

「うん。」


話しかけてくれる彼にもうまく返せない。

がんばれよ、なんてウインクしたたぁ兄の顔が脳裏をよぎった。

あの野郎、余計なことしやがって。








だけど、だけどね。


もう、長い長い片想いを、
そろそろ終わりにしたいんだよ。

君を想うと苦しくて、

息がしづらくって、

叶わない恋だったとしても、



「あのね、」

「ん?どうしたん?」

「私ね、章ちゃんのことがずっとずっと………」













ふと我に返って、
覗き込む彼の胸に飛び込む。


「花なに考えてたん?」

「私がまだ片想いだった時のこと。」

「もう結構前になるやんなぁ。」

「うん。

ねぇ、章ちゃん。」


「なぁに、花?」


「私ね、昨日も今日も明日もこれからもずっとずっと……」



あぁそういえば、あの頃もこうやって君に抱きしめられて、こう言われたんだった。



「俺から言わせて?
ずっとずっと、好き。」
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