執事シリーズ
□タオちゃんの執事A
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しかし、タオが高校に進級する時、重大な問題が発生しました。
高校の方針で、紳士教育の一環として、生徒達は全員、執事を伴って登校するという決まりがあるのです。
そして、私は大学を卒業し、ファン氏の会社に入社して、社会人生活が始まります。
私が会社にいる間、他の男(執事)が常にタオに寄り添っている…想像しただけでゾッとします。
ファン夫妻が執事の面接をする際、私も立ち会わせてもらいました。
しっかりとチェックし、タオに無害で安全な男(執事)を選ばなくてはなりません。
ですが、どの候補者達も皆、タオをイヤラシイ目で見ているような気がしてなりません。(気のせいです)
全員却下です!
こうなったら、もう決めました。
私がタオの執事をやります!
ファン夫妻はビックリして、一瞬言葉を失っていましたが、
「王子に執事をやらせるなんて、恐れ多いことです!」
「母国の国王陛下ご夫妻がお聞きになったら、お怒りになられます!」
と、当然のことながら、受け入れてもらえません。
外堀から埋めるしかないと、母に電話で事情を話しました。
親友の母から、ファン婦人に話してもらえば、納得してもらえるかもしれない…
母も、初めは、王子としての立場があるのに、執事になるというのは如何なものかと、受け入れてはくれませんでしたが、何度も粘って説得し、何とか受け入れてもらえました。
マスコミには、『クリス王子は王族を離れて結婚するにあたり、庶民感覚を身に付けるための社会経験の一環として執事の仕事を経験する』…と発表し、世論には、王子はしっかりしている!偉い!と評価され、ファン夫妻も渋々だけど納得してくれました。
「入社時期も遅らせることになってしまい、申し訳ないですね。」
「いえ、それは問題ありませんが…国王陛下ご夫妻がお許しになられましたので、大変恐れ多いことですが、タオの執事の件、よろしくお願い致します。」
「はい。よろしくお願いします。」
「あと…大変恐縮なのですが…
執事になっていただくには、執事試験に合格して頂かないと…」
「Oh!」
執事になるにも、資格試験に合格しなければならないのです。
ですが、これに関しては、殆ど問題ありませんでした。
執事として必要な、教養・マナー・知識などは、王子として教育を受けてきた私にとっては、どれも既に身に付けているものでした。
結局、蓋を開けてみれば、テストは最優秀成績で、Sランク執事の称号まで取得してしまうというおまけ付き。
「タオ、私がタオの執事になっても、いい?」
「本当にぼくのために執事になってくれるの?
クリス王子が執事の間は、ぼく達、ずーーーーっと一緒にいられるね!
嬉しい!」
「ぼくの王子様…大好きっ」と言って、タオが抱きついてきました。
出会った頃は、腰のあたりまでしか無かった背も、今では私の肩辺りまで伸びました。
それでも、中身は出会った頃の、純粋で素直で愛らしいまま…
「タオ…愛してるよ」
ずっと、そのままでいて…
その為だったら、私は何だってしてあげるから…
以上が、私がタオ様の執事になった経緯でございます。
タオ様が高校をご卒業されるまでの期間限定でございますが、タオ様だけを見つめて、常に寄り添っていられる大変貴重な時間です。
それでは、そろそろタオ様を起こす時間になりますので、これにて失礼致します。
(完)