終わりのない物語
□セフン 4月
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「すいません、ぼく、ドラッグストアで買物したいんで、下ろしてもらっていいですか?」
テレビ局から宿舎に戻る途中、1人で車から降りて買物に寄った。
タオの湿布が、そろそろ無くなりそうだったから、買っておかないと。
この前みたいに、1人で松葉杖ついて買いに行くなんて事にならないように、必要なものは、ぼくが買ってきてあげるんだ。
ついでに、お風呂上がりに一緒に食べようと、アイスクリームも買った。
「ただいまー!」
「あ、セフナおかえり...あのね...」
スホヒョンが何か話しかけてきたけど、まずはタオに会いたくて、後で聞くからと素通りしてタオの部屋に直行した。
「タオー、湿布買ってきたよ!
あとねー、アイスクリーム...」
「あの、だからね、セフナ...」
タオは部屋にいなくて、部屋の中は妙に片付いていた。
「タオ?」
「タオはね、お父さんが迎えに来て、今日、青島に帰ったんだよ」
ぼくの後を追いかけてきたスホヒョンが言った。
ガサガサガサッ
手の力が抜けて、ドラッグストアの袋が手から滑って床に落ちた。
「あ、でも、数日だけだよ
オレ達の活動が落ち着くまでは、宿舎に一人っきりになっちゃうだろ?だから...」
「本当に...」
「え?」
「本当に、数日で帰ってくるのかな...」
「セフナ?」
以前、タオのお父さんが呟いていた事を思い出した。
『ケガが続くようだと...仕事を辞めさせて、青島に連れて帰る...』
ううん、違う違う!
ブルブルと頭を振って、嫌な考えを頭の中から追い出す。
スホヒョンの言う通り、数日で帰ってくる。
そうでしょ、タオ?
宿舎で1人で留守番してるのは寂しいもんね。
きっと青島で、お祖母ちゃん特製の美味しいお料理を、お腹いっぱい食べて、一家団欒してるんだろうな...
うん、むしろ青島でご両親に見守られて、ゆっくりと休んでいてくれた方が、安心だよ。
そう自分に言い聞かせて、納得した。
夜、なかなか寝つけなかったので、自分の部屋を抜け出し、タオのベッドで寝る事にした。
まだタオの匂いが残ってるうちに、いっぱい吸い込んでおくんだ。
タオの匂いに包まれて眠ったせいか、その夜、タオと出会った頃の夢を見た。