終わりのない物語
□セフン 3月
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タオの足の痛みが大分良くなったというので、カムバ曲のMV撮影をしたんだけど、そのせいで、またケガが悪化してしまったみたいなんだ...
撮影中、何度も辛そうな顔をしていたから、
「タオ、足痛い?」
って聞いても、
「大丈夫!ちょっと休んだら、楽になったよ」
って言って、明らかに無理して撮影に参加していた。
実は、衣装で隠れているけれど、足首にはグルグルにテーピングを巻いてあるんだ。
タオが言う「良くなった」は、何もしていない時や歩く程度なら痛みは無いって事でしょ?
ダンスは思っている以上に、足首に負担がかかるんだから...
良くなりかけていた足首が、過度に負担をかけた事で痛みをぶり返してしまったみたい。
辛そうな姿に、早く休ませてあげたい...と、本当はその場に居た誰もが思っていたんだよ。
それでも、現場は、タオが無理しなくてはならないような状況だった。
カムバに向けて、スケジュールはギリギリの状態で、MVの撮影を遅らせるのはほぼ不可能だった。
タオにもそれが分かっているので、撮影中、痛いとは一度も言わず、脂汗を滲ませながら最後までやり遂げ、終わった途端に とうとう気絶してしまった。
「タオ...お疲れさま」
控室のソファに寝かせたタオを膝枕に乗せて、指で髪を梳いていると、何とも言いようのない不安が押し寄せてきた。
「頑張り過ぎなんだよ」
こんな、倒れるまでさ...あんま心配掛けないでよね...
暫くして目を覚ましたタオは、ケロッとしてこんな事を言う。
「ぼく、最後までやり遂げたよ!偉い?」
うん、偉いよ。立派にやり遂げたよ。
「頑張ったから、ご褒美あげる」
と言って、チュッとキスすると、タオがクスクスと笑った。
「今の、セフナにとってもご褒美でしょ?」
「そうだよ、ぼくだって頑張ったでしょ?」
「うん、そうだね。セフナも頑張った!えらいえらい!」
と、タオは手を伸ばしてきて、優しい目で見つめながら、ぼくの頬を撫でる。
「俺も頑張ったけど?」
と言いながら、カイが控室に入ってきた。
「あっそう、じゃあジョンイナにもチューしてあげる!」
「いらねーし。
てか、目が覚めたんなら、そろそろ宿舎に帰るってよ」
「分かった、いま行く!」
と、タオが立ち上がろうとするも、
「痛っ...」
「仕方ねえな、俺の肩に掴まって
反対側はセフナが支えてあげて」
カイとぼくが、両側からタオを支えて車に移動した。
「ゴメンね...ジョンイナだって腰痛いのに...」
「大丈夫だって、気にすんなよ」
車に近づくと、ぼくらの姿に気付いたヒョン達が数人、ワラワラと車から降りてきて、タオを車に乗せるのを手伝ってくれた。
「セフナー、ここ、ここ!」
自分の隣のシートを手でポンポンと叩いて、そこに座れと呼ばれた。
全く、タオは無邪気というか、何というか...
呆れつつも、嬉しくてついニヤけてしまう、ぼくがいる。