短編作品集

□CANDY
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ある、とっても気持ち良く晴れた日の昼間、ぼくの小さな幸せが…





ウーーーワンワンワン!


キャンキャン!



キキーーーーーッ

ドンッ





ぼくの手の中から、零れ落ちていった…






散歩しようと思って外に出た瞬間だって…

リード着けてなかったの?

ちょうど着けようとした瞬間だったらしいよ…

大きな犬に吠えられて、パニックになっちゃったって…

車道に飛び出しちゃうなんてな…

可哀想に…



タオは?

まだ目が覚めない

余っ程ショックだったんだね…

そりゃそうだよ、あれだけ溺愛してたんだもん



「ミンソギヒョン、ぼく、ちょっとタオの様子見てきます。」


「おぅ、セフナ、頼むな。」



あの時…
咄嗟の事とはいえ、なんであんな事言っちゃったんだろう…



「タオ…」

ショックで倒れて、まだ目が覚めないタオの手を握り締めた。


「…ャンディ…」

うなされてる?
事故の夢を見てるのかな…
目の前で…ショックだったよね…


「キャンディ!」

と叫んで、突然タオは目を覚ました。
そして、覚めたばかりのボーッとした顔で、ぼくを見て

「キャンディ…?」

って言うから、つい


「そうだよ、ぼく、キャンディだよ!」

って…

あ、キャンディは女の子なのに、ぼくって言っちゃった!


いやいやいや!そうじゃなくて!

ぼくがキャンディのふりとか、いくら何でも無理ありすぎだろ…


それなのに

「キャンディ!」

って嬉しそうな顔して、ぼくに抱きついて、頬ずりまでされたら、もう続けざるを得ないよね…


「タオ、心配かけてごめんね」


「ううん、キャンディ、ここにおいで」

と、ベッドに寝かされ、

キャンディ…キャンディ…
と楽しそうに呟きながら、僕のほっぺを摘んだり、鼻を押したりして、散ざん顔を弄られた。


「キャンディ、パパにチューして」

おでこにキスしてあげたら、溢れんばかりの笑顔になった。
そんな顔を見たら、もう少し、キャンディのふりを続けてあげようって思うよね…



「セフナ、タオの様子どお?」

と、ドアを開けてミンソギヒョンが顔を覗かせた。

まずい、ミンソギヒョンにも言っておかなくちゃ…


「キャンディ、どこ行くの?」

「ちょっと待っててね」



ヒョン、ちょっと…とドアの外に連れ出した。


「どうした?」

「実は、タオがぼくの事をキャンディだと思い込んでるんですよ…」

「ええ!?」

「それで、暫くはキャンディのふりしようと思ってるんで、ミンソギヒョンも話を合わせてくださいね。」

「マジかよ…」

「タオに、笑顔でいて欲しいんです。」

「う…ん、分かった…てか、見て見ぬふりしとくわ。」



他のメンバーには、ミンソギヒョンが伝えてくれたみたいで、皆は呆れながらも、遠巻きに見て放っておいてくれた。



ソファに座っている時は、タオの膝に頭を乗せて、ずっと頭を撫でられている。
気持ち良くて、目を閉じて身を任せていると、もうこのままキャンディのまんまでいいか…って気になってしまう。

チラッとタオの顔を見上げると、それはもう、最上級に愛しい慈しみの表情で、ぼくの事を見つめてくれるんだ…
違うか…ぼくじゃなくて、キャンディに向けてのものだった。

ちょっとキャンディに嫉妬するよね。



ご飯の時も、あーん て食べさせてくれるんだけど、メンバー達の痛々しいものを見るような視線が、ちょっと辛いな…

でもタオが楽しそうにしているから、ぼくも嬉しくなるよ。
キャンディも、きっとこんな気持ちでご飯を食べてたのかな?



「キャンディー!お風呂に入るよ!」

バスルームに連れて行かれ、あっという間に服を脱がされて、今、頭をワシワシっと洗われてる…

それから身体も洗われて…あれ?何か下半身あたりでゴニョゴニョしてる??って思ったら、別のところに移ったから気のせいだったのかな…


お風呂上がりに、ドライヤーで丁寧に髪を乾かしてもらう。
髪を梳きながら、地肌を撫でるタオの指が心地よくて…

キャンディは頭だけじゃなくて、全身だもんなぁ…
タオの指が全身を這い回って…

あ、ヤバイ、変な想像したらキャンディには絶対に有り得ない身体の状態になっちゃう。
深呼吸して、気持ちを落ちつけよう。



「キャンディ、寝るよ〜!」

あ、やっぱり寝る時も一緒なんだね…

タオに抱きしめられて、身体が反応しちゃったらどうしよう…って思ってたけど、タオの腕の中で、頭を撫でられて、それが暖かくて気持ち良くて、すぐにウトウトしてきちゃった。

今日はキャンディのふりして、気の張る部分もあったから、ちょっと疲れたかも…

だから…あっという間に…寝ちゃ…




こんな生活を続けて一週間ぐらい経った頃、タオの表情が暗くなってきた。

僕を見る目も、何だか切ない感じになってきて...

もしかして、ぼくがキャンディじゃないって、気付いてしまったのかな…?


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