執事シリーズ
□フナたんと執事A
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「懐かしいね」
「うん、懐かしい…」
フナたんは、久し振りにタオちゃんの家に遊びに来ています。
フナたんとタオちゃんは、小学校時代からのお友達です。
昔はしょっちゅう、一緒に遊んでいました。
今、その頃のアルバムを、2人でタオちゃんの部屋でオヤツを食べながら見ているところです。
その頃、クリスとチャニョルは、別室でお茶を飲みながら待機中です。
何だかソワソワと落ち着かないクリス
「何で、そんなにソワソワしてるんですか?」
チャニョルは不思議がっています。
クリスは、タオちゃんとフナたんが部屋に2人きりなのが、気になって仕方ないのです。
と言うのも、クリスは知っているのです。
タオちゃんにとって、フナたんは…
「ねぇセフナ、ぼく達が最初に出会った時のこと、覚えてる?」
「覚えてるよ…」
忘れるはずもありません…
それは、フナたんの初恋の思い出でもあるのですから…
小学校の入学式が終わって、生徒達は担任の先生に引率されて、それぞれの教室に移動しました。
そして、自分の名前のシールが貼ってある席に座ります。
フナたんが席につき、隣の机に貼ってあるシールを見ると、ファン・ズータオと書いてありました。
フナたんは、大人たちの会話を思い出しました。
確か、名家ファン家の子息が入学してくるとか何とか…
名家の子息なんて、ワガママ放題に育ったボンボンに違いない。同じクラスで、しかも隣の席か…ヤダな〜
とフナたんは思っていました。
「あ、ぼくの席、ここだ!」
名家のボンボンが来た…
「ぼく、タオ!よろしくね!」
キラッキラしたお目目、ほんのり上気した頬、桃色のくちびるでニッコリと微笑むタオちゃんを見て、フナたんは、天使って、きっとこんな感じなんだろうな…と思いました。
「ぼく…セフン…よろしく」
「わぁ、よろしく♪」
と、フナたんの手を握ったかと思うと、ブンブンと手を振り回すように握手をされました。
嬉しかったのに、何だか照れくさくて、わざとそっけない態度をしてしまったフナたん。
「初めて会った時、何だかセフナ冷たかったんだよね〜」
「えー、そうだったかな…」
そっけない態度とは裏腹に、心はすっかりタオちゃんに奪われてしまったフナたん。
気になって仕方なくて、いつもチラッチラッと、ついつい横目でタオちゃんの事を見てしまうのでした。
「しょっちゅうぼくの事、睨んでたでしょ…嫌われてるんだと思ってた。」
「それは誤解だって!」
そんな2人が仲良くなったのは、タオちゃんが上級生にからかわれて泣きそうになっている所を、フナたんが助けたのがキッカケでした。
フナたんは、その頃から背も高くて、既に子役としてお仕事していたので、いかにもケンカが強そうな演技で相手をビビらせ、撃退したのでした。
「あの時のセフナ、すっごくカッコ良かったな〜」
「ハッタリだったけどね。」
「でも、嬉しかったんだよ!胸がキュンってしちゃったもん。」
実は、その時がタオちゃんの初恋の瞬間でした。
タオちゃんの初恋の相手も、実はフナたんだったのです。
だからクリスは、タオちゃんがフナたんと2人きりになるのが、心配で仕方ないのです。
初恋同士の2人でしたが、まだ幼い恋心なので、ただ一緒に居られるだけで幸せでした。
毎日のように、お互いの家を行き来して遊んでいました。
ある日、タオちゃんがフナたんのお家に遊びに行っている時、急に空が暗くなったかと思うと、スコールのような雨が降り出し、カミナリが鳴り響きました。
タオちゃんは怯えて、泣きながらフナたんにしがみついてきました。
フナたんだって、本当はちょっと怖かったけど
タオの事は、ぼくが守るからね!
「って言ってくれたんだよね、あの時…」
今だって、その気持ちは変わらないんだけどな…
「でももう、ぼくが守る必要なくなっちゃったね…」
「セフナ…」
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